国が提唱する“働き方改革”に伴い、テレワークの推進が注目を集める今日。来年の東京オリンピックを見すえ、7月22日からスタートしている「テレワーク・デイズ2019」を前に、ヴイエムウェア株式会社が在宅勤務や外出先での業務に有用なスマートデバイス(スマートフォンとタブレット)の利用実態に関するアンケート「ビジネスにおけるモバイルの利用動向」をおこない、7月17日にその結果の報告会を実施しました。
代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏

今回の調査は主にスマートフォンやタブレット(ノートPCを除く)で業務をおこなっているビジネスパーソン519名を対象に、インターネット調査によって実施されたもの(調査期間は今年の6月25日〜27日)。

最初に登壇したヴイエムウェア マーケティング本部 チーフストラテジスト プロダクト&ソリューション EUC/IoTの本田豊氏の報告によると、「過去2年の結果と比較しても、テレワークの推進は、ひと言でいえば“微増”だった」とのこと。その内容として、《会社支給のPCの社外持ち出しは認められているか?》の問いに、『認められている』との回答は、昨年の43.1%から44.1%とわずかに増えただけにとどまり、また、《勤務先でテレワークは認められているか?》の質問に対して『はい』の答えは21.8%(2018年)から24.3%と、あまり変化が見られなかった。

その一方で、《働き方改革の実現を阻害する要因は?》の質問にもっとも多かった答えが『企業文化・経営者の意識』の67.2%。また、《(従業員に対して)どこからでも働ける場所を提供しているか?》といった環境調査では、アメリカ・イギリス・ドイツが60%以上だったことに比べ、日本は約40%と低い数値だったことがわかった。

これらの結果を踏まえ、本田氏は「高い情報通信技術を持つ先進国でありながら、日本は世界と比べ遅れをとっており、また、これからの日本にはテレワークの実現を可能にする強いリーダーシップを持つ者が必要である」と述べた。

マーケティング本部 チーフストラテジスト プロダクト&ソリューション EUC/IoTの本田豊氏

続いて、テレワーク推進のエキスパートである株式会社テレワークマネジメント 代表取締役の田澤由利氏が登壇し、「テレワークの普及と導入の『壁』」と題したセミナーを開催。

田澤氏はまず、「働き方改革のポイントは《残業しない働き方》《通勤しない働き方》《(個人の時間と)両立できる働き方》《(同じ会社の人間と)直接会わない働き方》《副兼業可能な働き方》の5つが挙げられます。これらを可能にするのがテレワークです。そのためには『ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を“有効に活用”できる柔軟な働き方』が重要になってくる」と提言。

また、総務省の通信利用動向調査のデータを元に、平成30年でテレワークを“導入”または“導入を予定”している企業は26.3%であるという現状を発表。しかし、「2年ほど前から加速し、今後も増えていくことが予想されます」と普及の可能性を示唆した。

株式会社テレワークマネジメント 代表取締役の田澤由利氏

なお現在、国は2020年東京オリンピックの開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づける、働き方改革の国民運動を展開。この運動への参加企業登録数も、2017年(7月24日のみ実施)のテストスタート時は約950団体だったのが、昨年(7月23日~27日の5日間実施)は1682団体と伸びてきていることを示し、「来年の実施期間までには3000団体を目指したい」と期待を込めた。(2019年7月22日現在では2322団体)

しかしながら、テレワークを導入するにはいくつかの“壁”があることも述べ、それらの要因となっているのが、《必要性を認識する壁》《テレワークを実際に導入する壁》《テレワークの効果を出す壁》《テレワークがあたり前の働き方にする壁》の4つの段階にあると説明。

こうした現状を解説しながら、「確かに働き方を変えるのは大変なこと。軌道に乗るまでに何年もかかってしまう覚悟が必要です。でも、始めなければ何も変わらないのも事実です。これから新たに起業するベンチャー企業などははじめからテレワークを導入するスタイルが増えてくる。そうした中で既存の企業は遅れをとることになります」と、これからの時代を生き抜く企業になるには、早急なテレワークの導入、働き方改革を検討する必要性を伝えた。

その後は、働き方改革をテーマにしたトークセッションも開催。

登壇したヴイエムウェア株式会社 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏が、「私はもうすぐ3週間ほど夏休みをいただきます」と話し、会場に集まった参加者を驚かせると、「バカンス先のカナダでは毎朝、スマートデバイスで会社からの報告をチェックする。それだけで、業務には何の支障もありません。こうしてトップの人間がまず効率のいい働き方改革を示していくことも大事なんです」と自らの体験を紹介。

また、同社の人事本部長 和田麻衣子氏も「(テレワークや働き方改革を導入するにあたって)社員全員が、“何のためにやっているのか”“どういう成果が得られるのか”といったゴールを明確にすることが大事になってくる」と話した。

人事本部長 和田麻衣子氏(左)

さらに、質疑応答で挙がった『テレワークの導入で生産性はあがるのか?』との質問に対して、ジョン・ロバートソン氏は「最初は上がらないと思います」と回答。「しかし、通勤時間や必要性のないミーティング時間など、無意味な労働時間は減っていく。これがフェーズ1。その後、フェーズ2では空いた時間で新しいアイデアやイマジネーションが生まれ、やがてそれが生産性の向上につながっていくと思います」と時間をかけて取り組んでいくことの必要性を述べた。

そして、「今から10年後、働き方改革が定着したのは、2020年の東京オリンピックが契機だった、となるよう、2020年のレガシーの一つにしたい」と期待を寄せた。
 
国は、来る2020年東京オリンピックの開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、働き方改革を呼びかけている。東京オリンピック・パラリンピックの開催が、日本にテレワークの拡大、働き方改革の定着をもたらすきっかけを与えてくれるかもしれない。

もちろん、ヴイエムウェア株式会社は呼びかけに賛同しオリンピックの開催期間中、オフィス・クローズを行っていく考えである。

ヴイエムウェア株式会社/https://www.vmware.com/jp.html