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Q:高校時代に夢中になっていたことは何ですか?

最初は陸上部に入ったのですが、家から学校までがすごく遠かったんです。
普通に通うと、自転車と電車と徒歩で片道2時間弱。陸上部の朝錬に参加するためには、朝5時台の電車に乗らなければなりません。しかも電車は1時間に1本ぐらいしかないので、乗り遅れることできません。
ちょっと厳しいなあと思い、生物部に入ることにしました。
生物部では、先輩たちが学校近くに生息するヒカリモと呼ばれる藻類をテーマに研究をしていました。そのテーマを引き継ぎ、部員3人で日本学生科学賞を目指して本気で研究を始めました。
朝に実験を始め、休み時間になるたびに生物実験室にデータを取りに行ったりもしました。ちょっと変わっていますよね(笑)。
みんなが休み時間でおしゃべりしたり、遊んだりしているところを「データをとってきます」とやっていたんですから。
本格的に研究を始めてからはすごく忙しい日々でしたが、目標にしていた日本学生科学賞で文部臣賞(当時)を受賞できました。
さらに日本代表として高校生を対象とした世界最大の科学コンテスト、国際学生科学技術フェア(ISEF)にも出場することができました。

Q:高校時代で学んだことが、いまの仕事にどのように役だっていますか?

私は、藻類の研究で国内最高峰と言われる筑波大学にAC入試(自己推薦型の入試)で入りましたが、アメリカで開催されたISEFで入賞したことや、日本でも文部大臣賞を受賞できたことが強みになりました。
大学でも藻類の研究を続け、いまは国立環境研究所で藻類の多様性を研究していますが、NPO法人の「日本サイエンスサービス」でISEFに出場する高校生のサポートも行っています。
昔は出場する立場だったのですが、いまは高校生を支える立場にいます。先日もISEFに日本代表として出場する学生のメンターとして指導し、プレゼンテーションの研修会にも参加してきました。

Q:理系に進んでよかったことは?

ずっと生物が好きで、その道を歩いてきたら自然に研究者になったという感じです。
私は高校時代にはもう研究者になろうと思っていました。
でも大学に進学する際には、親には高校で生物の先生になると言っていました。
やっぱり研究者は就職が大変ですし、親に「生物をやって何になるの?」と聞かれても、当時はうまく説明できないじゃないですか(笑)。
それに高校で先生をしたあとに大学で研究者になったり、研究者をしていたけれども高校で先生になったり、というケースは実際にあります。
どちらの道に進んでも大丈夫なように、大学では研究をしながら、教職課程もとっていました。
研究者の仕事はすごく楽しいですよ。
私はもともと国語と生物が好きで、両方を活かせる仕事をしたいと思っていました。生き物を見て、実験をするのも好きですし、論理立てて文章を構成していくのも好きなんです。
実験をして論文を書く。そのふたつを実践できるのは研究者です。どちらかだけでもダメなんです。
自分にあった研究者という仕事に就けて、本当によかったです!
 
(文=川原田剛 写真=井上孝明)