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6月9日に講談社にて、「ダイバーシティ経営100選企業の先輩リケジョに聞く!~リケジョが働きやすい職場って?」が開催されました。総勢、約70名が集まるビックイベントとなりました。「ダイバーシティ」に対する社会の関心の高さ、また、理系女子学生さんの仕事への関心の高さがうかがえました。

 

ダイバーシティ経営とは、グローバル化や多様化する市場や競争に対応するため、女性、外国人、高齢者、障がい者等を含め、多様な人材を活用して、企業のイノベーションの創出、生産性向上等の成果を上げる企業戦略の一つです。経済産業省では、こうした取り組みをしている企業を、「ダイバーシティ経営企業100選」に選定し、表彰しています。
今回のイベントでは、これらの企業で働くリケジョにゲストとしてお越しいただきました。(ダイバーシティ経営についての詳細は、こちらをご覧ください)。

 
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自己紹介タイム!

 

まずは、自己紹介タイムです。各グループで、簡単に所属や名前を紹介したあと、「自分がリケジョだなと思う時」を一つずつ発表してもらいました。普段はドン引きされる「リケジョあるある」もここなら共感してもらえるはず。「計量カップでも正確に測りたくなる」「商品の裏の成分表を必ずチェックする」などなどが出され、各テーブルが一気に笑いに包まれました。

 
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キーノートスピーチ 「ダイバーシティって何?」 

 

まずは初めに、経済産業省経済産業政策局経済社会政策室 係長小林佳菜さんによる、“今、なぜダイバーシティなのか?”についてのご紹介がありました。
安倍政権のもと、成長戦略の一つとして「女性の活用」について注目が集まっているとのことで、また、企業の中でもダイバーシティを積極的に推進しているそうです。ダイバーシティを推進することは、複雑な市場への対応できること(購買決定権の2/3は女性が握っているそうです!)、女性の方がリスク管理能力が高いこと、女性を活用している企業は「いい会社」ということで市場からの注目されること、または、眠っている企業内の人材が活用できること、といった意義があることを、データを見ながらご説明していただきました。
また、経済産業省で取り組んでいる「ダイバーシティ経営企業100選」の事業についてもご説明頂きました。こちらの100選に選ばれている企業は、就職活動などにおける企業選びの一つの指針になるといえます。
また、女性を活かす企業は、「続けやすさ」×「活躍しやすさ」で見るべきであるとお話も頂きました。さらに、企業を見るポイントとして、口コミや先輩へのインタビューといったことだけなく、四季報のデータなども活用して、客観的にみることも大事といったアドバイスも頂きました。

 
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ゲストトーク&パネルディスカッション
「先輩リケジョに『理系が働く』について聞いてみよう!」

 

いよいよ先輩リケジョによるゲストトークです。
各企業で働くリケジョの皆さんに、自分のお仕事のこと、リケジョとしての強み、なぜその企業を選んだのかなどについてお話いただきました。
 ① 日産自動車株式会社 久保田 悠美さん
(実験技術開発本部実験・計測技術開発部計測技術開発グループ)
~ 「男女差よりも個性!モノづくり現場に新しい風を吹かせる」

 

久保田 悠美さんは、自動車の性能評価実験などで使われる「計測技術」の開発を担当されています。自動車会社の中では珍しい物理系のご出身ということで、その専門性活かして、ご活躍されています。特に、これからの電気自動車は電磁力が不可欠ということで、専門の強みを発揮され、ベテランの方とも対等に議論をされるなど、男女の差を感じることなく日々働いてらっしゃるようです。社内では、男女で差があると感じたことはないそうで、むしろ個々人の個性によるものが大きいそうです。日産自動車では、社内SNSなどや社内保育園の設置など、女性が働くことについてのサポートも充実しています。ちなみに、現職場の女性の割合は10%程度だそうです。また、久保田さん自身は、英語が苦手でないということから、海外への学会発表に参加するなど、得意なことをそのままチャンスにつなげてグローバルにもご活躍されています。最後に学生に向けて、仕事を続けるうえで、オンとオフとの切り替えは重要なので、学生のうちに、一生付き合えるような趣味を持ってもらいたいとアドバイスを頂きました。

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 ② TOTO株式会社 渡辺 瑞希さん(分析技術第一グループ)
毎日家族と過ごす生活空間を清潔で快適な環境に変えていきます!」

 

TOTOの渡辺さんは、学生時代のご専攻が「水環境」ということで、「水資源」に関わるお仕事を希望されていたこと、また、住環境の製品ということで女性の視点を活かせそうということで、TOTOに入社されました。現在は、微生物を用いた商品開発・基礎研究やクレーム分析などを行ってらっしゃいます。ご自身は、3歳のお子さんのママでもあり、お仕事と子育てに奮闘されています。チームが女性ばかりということもあり、それぞれに事情を察して仕事+家庭がうまく回るように連携をして支え合っているそうです。また、管理職をめざし、社内の研修の一環の「経営塾」に入塾されるなど意欲的に活躍されています。渡辺さんいわく、研究は楽しいが、そこはやはり企業の研究開発であるため、コスト意識やお客様を意識することはもちろん、ただ言われたことをやるだけでなく、成果を上げるため自分なりに工夫や努力をすることが大事とのことです。そして、何よりも自分自身が携わった商品が世に出てCMを見た時は本当にうれしいそうです。商品を出す企業ならではの仕事のやりがいであると言えます。最後に学生さんへのメッセージとして、研究以外の活動、例えばサークル活動などからも学べることは多いので、そうした活動も楽しもうということ、また、企業は色々な人で成り立っているので、対応力を付けることが大事と、お話いただきました。

 
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 ③ 株式会社NTTデータ 松島 珠理さん
(第一金融システム事業本部 決済ITサービスBU 開発統括部全銀担当)
「ライバルは男性でも女性でもなく自分自身?!」

 

松島さんは、大学では「分子生物学」専攻していたという異色な人材ながら、現在、NTTデータで、日本の社会・経済を支える重要決済インフラシステム「全銀システム」の開発、維持に関わってらっしゃいます。また、入社10年目で、一つの業務チームを任されています。日本のインフラともいえるビックシステムを扱っているため、決してミスの許されないお仕事ということですが、理系特有の緻密さや論理力で事前に問題を防いだり、真の問題点を解決するなど、専門は違いますが、理系としての能力を発揮してご活躍をされています。また、逆に女性であるがゆえに、コミュニケーション能力を活かして、分からないことはわからないとすぐに聞いて教えてもらうなどといったことが、仕事の進行する上で役立っているそうです。松島さんいわく、「仕事は教えてもらう、振ってもらうのではなく、自分でとりに行かないとないし、成長しない」とのことです。これは、入社して数年目で、そうか!とご自身が気づいたポイントであるそうです。また、結果のみが評価されるという成果主義の厳しさについてもお話いただきました。これだけみると仕事って厳しいなと学生さんは感じるかもしれませんが、頑張った成果は評価されるし、お給料として反映されるという、ここの部分がまさに仕事の醍醐味であると言えます。最後に学生さんへ学生の間は、将来について徹底的な自己分析をできる、または学生ならではの羽目を外せるラストチャンスなのでがんばってもらいたいというメッセージをいただきました。

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 ④ 花王株式会社 外間 貴美 さん(香料開発研究所 主任研究員 グループリーダー)
「商品開発の職場 ~リケジョが生き生きと働く場所~ 」

 

花王の外間さんのお仕事は、ヘアケア製品用香料開発です。香りを使って原料の匂いをカバーしたり、ブランドの世界観を伝えたりすることが目的です。また、グループリーダーとして、香り提案責任を担っていらっしゃり、また、男性女性、または外国人の方のいるグループ(まさにダイバーシティ)のとりまとめもされています。
「香り提案」ということで、実験的な開発能力だけでなく、消費者ニーズをつかむ、イメージを具体化する、他の部署やチームの人とコミュニケーションしながら仕事をするといったことが必要となってくるそうですが、それは、外間さんの理系&女性であるという強みが活かされている部分でもあるそうです。また、リーダーとして複数のプロジェクトに携わらなければならないことも多いそうですが、女性の方がそれには向いているのではないかというのが外間さんのお考えです。扱っている商品もそうですが、仕事の進め方や内容自体からも、女性が活躍できる職場であるいえそうです。最後に、「家庭も仕事も欲張っていい」「与えられたチャンスを活かす(謙遜は美徳でない)」というメッセージを頂きました。女性は、ある程度のところまでくると、私には、、、といった遠慮をすることがあるそうですが、その壁を乗り越えることで、新しい仕事の楽しさがあるとのことです。ぜひ、学生さんにもこの「欲張る」の意味を理解してもらえたらと思います。

 
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 ⑤ キリンビール株式会社 妻鳥 奈津子さん(マーケティング部 商品開発研究所)
「理系であることの醍醐味、商品開発の現場から」

 

妻鳥さんは、ビール、発泡酒、新ジャンル、ノンアルコールビールの味の開発をされています。入社すぐに地方の工場での生産管理をされて、その後、研究所に配属されて商品開発に携わってらっしゃいます。商品開発、3年目にして、既に世の中に4種類の製品を出してらっしゃいます。味の開発は一任されているので、世に出ている製品の味は自分が決めているという充実感は半端ないそうです。これは、消費者に近くかつ大量に出回る製品に携わっている故の特典であるといえます。ビールは嗜好品ではありますが、それで生活を豊かにしたり、人生の楽しみを与えたりすることができるので、ビールで世界を変えるという可能性も感じてらっしゃるそうです。また、こうして商品の味の開発に携わることができるのは、自分が理系だからであるからこそだそうですし(理系職種が味の開発チームに配属されるので)、さらに、企画、マーケティグ、原料調達などなど会社の色々な部門で理系が活躍されており、ご自身は会社の色々な課題や問題は、理系脳が解決してくれると思ってらっしゃるそうです。また、新たなビールのユーザー層として女性はターゲットとされているそうで、そういった意味でも女性であることが、強味となっているそうです。最後に学生さんに「経験の数だけ自分の力になる。学生時代、分野問わず、楽しいと思ったことにはとことん時間を費やしておこう」という力強いメッセージを頂きました。

 
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次に、パネルトークということで、事務局より「会社に入って何年かしてから気づいたこと」「出産子育てが仕事にどのようないい影響を与えるか」「大企業に入るよさ」「大学院に進学することについて」ということでお伺いしました。
特に理系女子大生が興味のある「出産・子育て」については、短時間で仕事をやらなくてはならないということが、逆に、優先順位をつけて効率的に仕事ができるようになる、計画性を持って仕事ができるようになるといったように、仕事の取組み方がいい方向へ変化するというお話を頂きました。また、なんといっても、ママとしても頑張っていることがやはり評価がされるのではないかというお話でした。
また、大企業で働くよさというのは、色々な職場や職種の人がいるので、一つの企業でも色々な仕事ができるチャンスがある、ビッグプロジェクトに関わることができる、自分の関わった仕事が社会に大きな影響を与えるといったようなご意見をいただきました。

 
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グループトーク「リケジョが働くについて3つのテーマを、みんなでディスカッション」

 

ゲストの皆さんや、各企業のダイバーシティ推進のご担当の方にもご参加頂き、各テーブルでグループトークを行いました。
各人が「1.リケジョ(自分)の強みって?」「2.リケジョ(自分)の働くの目的・ゴール像は?」「3.仕事って○○ってわかった!」の3つのお題について自分の考えを発表し、テーブルごとに共有しながら、意見交換をしていきました。各テーブルでは、学生の発表について、社会人の方々が、ご自分経験を基にアドバイスや意見を頂くという形で進み、学生さんは、そうした意見を熱心に聞いていました。
最後に全体で共有となりましたが、「仕事って意外と面白いとわかった!」と書いた学生さんが数名いて、社会人一同苦笑となりました。仕事ってそんな風に学生さんに思われていたというのは、新たな発見でありましたし、また、今日のイベントが、そういった考えをポジティブにする気づきとなったならば、まずは大成功ではないかと、事務局としては感じます。
また、改めて、社会人の方々も、考えを整理するチャンスになったというお言葉も頂きました。

 
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交流会 ~各企業の先輩にお話をきいてみよう!
~他の大学のリケジョと友達になろう! 

 
最後は交流会です。それぞれ、お目当ての先輩を囲んでのお話がはずみました。

今回のイベントでは、本当にゲストの皆さんが優秀かつステキで、参加者全員に仕事を深く考えるきっかけを与えてくださいました。参加者のある方は、「リケジョは本当にすばらしい、日本の未来は明るい」とまでおっしゃっていました。参加した学生さんも前向きな気持ちで帰ることができたのではないかと思います。 
経済産業省の小林さんを始め、各企業のダイバーシティ推進ご担当の皆様のおかげでこのような会を持てたことを大変ありがたく存じます。そして、何よりも、お忙しい中、後輩のために資料づくりまでしてくださったゲストのリケジョの皆様に感謝いたします。
リケジョブロジェクトとしても、今回の会で得た気づきを基に、リケジョ人材が日本を救う!くらいの意気込みで、今後もプロジェクトを展開していきたいと思います。

 
ご参加、頂いた皆様、どうもありがとうございました。 (矢部)
 


参加者の声

・幅広い分野の会社の方のお話が聞けてよかったです。ダイバーシティ企業の良さが分かりました。(学生)
・素敵な女性、ロールモデルとなる理系女子の先輩方と話すことができ、とても将来を考えるうえで参考にしたいと思いました。働く女性はかっこいいと思いました。(学生)
・実際に働いている理系女子の先輩方のお話をお聞きして、働くということに対する意識が少し変わりました。コストマネジメント、お客様の視点を考慮しなくてはならないという制約や大変な点は大学の研究より多いと思いますが、その分より直接的に社会に貢献するやりがいや達成感があると思いました(学生)
・意外と「働くこと=つらい」というイメージが学生さんにあることに気づきました。働くイメージを大学前に教育課程でつかめる大切さを感じました。(社会人)
・同じ理系の道を進む学生のお話や将来など、意見交換ができて、有意義な時間をすごせました。周りのモチベーションの高さに良い刺激を受けました。(学生)