打ち合わせや営業で他社を訪問するとき、自社でお客さまを迎えるときなど、社外の人と接する機会は数多くありますよね。研究開発職や技術職も、共同研究先や取引先を訪問する機会は多々あります。
普段は“社員の一人”でも、社外の人と接するときはあなたが“会社の顔”。そこで今回の「理系のためのビジネスマナー講座」では、他社訪問時と来客応対時の正しいマナーのポイントをお伝えします。

 

他社訪問のマナー

他社訪問では、相手企業の大切な時間をいただくことになります。感謝の気持ちを常に持ちながら、相手にも「会ってよかった」と思ってもらえるような振る舞いを心がけましょう。

■出発までに準備すること

・相手の情報をリサーチ
初対面の人と約束をしている場合は、訪問先企業の事業内容などを事前に頭に入れておきましょう。以前に取引があった場合は記録に目を通しておき、当時の担当者に話を聞いておくと安心です。

・話したい内容の整理
当日スムーズに話を進められるよう、訪問時に伝えたい内容や確認したいことを洗い出し、整理しておきます。

・移動ルートの確認
交通手段や移動ルートをきちんと調べておきましょう。電車が遅れたとき、渋滞にはまってしまったときなど、トラブルがあった際の代替ルートもイメージしておけるといいですね。

・持ち物と身だしなみのチェック
必要な資料がきちんと揃っているか、名刺は充分な枚数が入っているかなど、持ち物を確認します。髪がぼさぼさになっていないか、靴が磨かれているかなど、身だしなみもチェックしておきましょう。

 

■到着したら

・5分前には到着できるように
時間厳守は社会人として最低限のマナー。かならず5分前には到着しておけるようにしましょう。心がけとしては、15分前には到着できるよう訪問先に向かうことです。
とくに、研究所や工場など敷地の広い場所へ訪問するときは、最寄駅から敷地は近くても入口は遠いところにあったり、敷地内も歩くことを計算に入れて、時間に余裕を持って行動します。
遅れるのは問題外ですが、早すぎる到着も先方の準備が整わないうちに到着することになり迷惑がかかります。
早く着いても5分前まではロビーなどで待機しましょう

・コートを脱ぎ、身だしなみの最終チェック
コートを着ている場合は、建物へ入る前に脱いでおきます。脱いだコートは中表にして片手に持ちます。身だしなみの最終チェックもしましょう。
このとき、名刺入れを取り出しやすいところに入れておくと、のちほどのあいさつの際にスマートです。ただし、おしりのポケットに入れることは失礼にあたるのでNG。スーツの内ポケットやワイシャツの胸ポケット、鞄の外ポケットなどに入れましょう。
また、身だしなみチェックのときにメイク直しもしたくなるかもしれませんが、訪問先のトイレなどで直すのはNGです。

・携帯電話はマナーモードに
着信音が鳴ってしまわないよう、携帯談話はマナーモードに設定するか、電源をオフにするのを忘れずに。

 

■受付の手順

・取次をお願いする
受付担当者に会社名と氏名を名乗り、相手の部署名、氏名、約束の有無を伝えます。(無人の電話受付の場合は、内線電話で同じように伝える)

例)
「◯◯株式会社の☆☆と申します。お世話になっております。営業部の山田さまに10時にお約束をいただいております。恐れ入りますが、お取次をお願いいたします」

その後、指示をもらったら「ありがとうございます」とお礼を伝え、従いましょう。ちなみに、受付ロビーがある企業ではソファーなどに座って待つことになるケースが多いです。その場合、担当者がきたらすぐに立ち上がって挨拶をします

・案内してもらう
会議室まで案内されているときは、すれ違う社員にもきちんと挨拶をしましょう。部屋に到着したら案内人にお礼を言い、入室します。このとき、具体的に席を進められた場合はその席に座って担当者を待ちます。とくに指示がなかった場合は下座に座って待ちましょう。鞄は足元に置いておきます。

 


▲お客さまには、出入口から遠い方の列に座っていただきます。テーブルの端、かつ出入口に近くなるほど下座になります。


▲会議の場合は、出入口から遠い方の列の真ん中の席が上座となることもあります。

▲3席つながっているソファー席がある場合の席次です。基本ルールは同じく、入口から一番遠い席が上座です。席がつながっている場合は、次が反対の端の席、続いて真ん中の順番です。

 

■担当者が入室したら

・挨拶は立ち上がって
ノックの音が聞こえたらすぐにイスの横に立ち上がります。そして、挨拶の言葉と、時間を割いてもらったことに対するお礼を伝えましょう。

例)
「◯◯株式会社の☆☆と申します。よろしくお願いいたします。本日は、お忙しいなかお時間をいただきましてありがとうございます」

・名刺交換
相手が初対面の場合は名刺交換を行います。名刺交換が済んだら自分の席に戻り、相手にすすめられてから着席しましょう。

・飲みものは勧められてから手を付ける
訪問先で出されたお茶を飲んでもいいのか迷う人もいるかと思いますが、基本的には「相手にすすめられたら飲んでOK」です。もしくは、相手が飲んでいるようであればこちらも手をつけて問題ないでしょう。このとき、「いただきます」とひと声かけるようにしてください。
もし上司や先輩と一緒に訪問している場合は、目上の人より先に飲むのは避けるのがベターです。

 

■退室する

・最後の挨拶
面談が終了したら、改めて時間をとってくれたことに対するお礼を述べて退室します。感謝の気持ちをこめて、ていねいに挨拶しましょう。

・建物を出るまで気を抜かない
建物の外に出たら、もう一度振り返っておじぎをします。担当者と別れたあとも、最後まで気を抜かないようにしましょう。誰が聞いているかわからないので、建物を出るまで私語も控えるのがベター。コートを着るのも建物を出てからです。

 

来客応対のマナー

受付窓口がない会社の場合は、お客さまに気づいた社員が応対することが多くあります。最初に接する社員の印象は、会社そのもののイメージを左右することも。明るく、ていねいに応対するようにしましょう。

■お出迎え

・明るい笑顔でお迎えする
お客さまの姿が見えたら、「おはようございます」「いらっしゃいませ」と明るくさわやかに挨拶します。その後、「失礼ですが、御社名とお名前をお伺いしてよろしいでしょうか」と尋ねましょう。事務的な受付にならないよう、心をこめて対応するのがポイントです。

・約束がある方の場合
「◯◯株式会社の☆☆さまでいらっしゃいますね。お待ちしておりました」とお伝えします。その後の応対の例は以下の通りです。

例)
そのままご案内する → 「応接室にご案内いたします」(まず行き先を伝える)
担当者が受付に来るのを待ってもらう → 「ただいま△△が参りますので、恐れ入りますがこちらでお待ちいただけますでしょうか」
来訪者だけで担当者のもとに向かってもらう → 「△△は7階でお待ちしておりますので、恐れ入りますがこちらのエレベーターで7階までお願いできますでしょうか」

・約束がない方の場合
アポイントが入っていないようであれば、「◯◯株式会社の☆☆さまでいらっしゃいますね。失礼ですが、お約束でいらっしゃいますか?」と確認します。約束がなければ「ただいま確認してまいりますので少々お待ちください」と伝えたうえで名指し人に連絡をとり、指示をあおぎましょう。

 

■ご案内

・通路でのご案内
お客さまの歩調に合わせて、右斜め前方(2〜3歩前)を歩きます。このとき、お客さまに通路の中央を歩いていただけるようにしましょう。また、通路を曲がるときは「こちらでございます」と示すとていねいです。

・階段やエスカレーターの昇り降り
ご案内の際は、昇るときも降りるときも先導するのが基本です。昇り始め、降り始めのときは「お先に失礼します、お足元にお気をつけください」とひとこと添えましょう。

・エレベーターでのご案内
エレベーターの操作はかならず案内人が行います。乗り降りは基本的にお客さまが先ですが、誰も乗っていないエレベーターに乗る際は「お先に失礼します」と先に乗り込んで、「開く」ボタンを押して待ちましょう。

▲乗客が多くて身動きができない場合を除き、操作盤の前が案内する人の定位置です。お客さまは、あなたの背後に位置します。

 

■入室

・かならずノックする

ドアを開ける前に、かならずノックをします。回数は3回が一般的です。

・押し開きドアの場合 → 案内人が先に入室
「お先に失礼いたします」と言って会釈したあと、ドアを開けて先に入室します。部屋に入ったらすぐにお客さまのほうへ向き直り、ドアを押さえて「どうぞ」と室内を指し示しながら招き入れましょう。

・引きドアの場合 → お客さまが先に入室
ドアを開けたら、ドアノブを持ったまま「どうぞお入りください」とお客さまに入室いただきます。

※ドアの開け閉め時には“ドアと一緒に動くようにする”と覚えておくと、自分とお客さまのどちらが先に入室するかわかりやすいです。

・上座をすすめる
入室したら、「どうぞこちらにお掛けください」と上座を示して座ってもらいます。

・退室する
お客さまが着席するのを待ってから、「ただいま◯◯(担当者)が参りますので少々お待ちください」とひとこと伝えて退室します。

 

■お見送り

・部屋の外でお見送りをする場合
心をこめて挨拶し、お辞儀をして見送ります。

・エレベーターの前までお見送りをする場合
お客さまが乗り込んだら挨拶をして、エレベーターのドアが閉まるまでお辞儀を続ける。

・建物の玄関先までお見送りをする場合
外に出て挨拶をしたら、お客さまが見えなくなるまで見送ります。

 

こんなケースに注意! 困った体験談

・交通機関の事情で遅刻しそうなった時、相手方の連絡先を控えておらず、連絡できなかった!
・訪問先の担当者の方の苗字しか分からず、受付の方を困らせてしまった!

→トラブルなどでやむを得ず遅れそうな場合は、すぐに連絡して事情を伝え、到着の目安などを伝える必要があります。
外出先ではセキュリティの関係でメールなどを確認できないこともあります。また、訪問先には同じ名字の方が複数人いらっしゃることも多いです。
訪問時には、面会する相手のフルネーム、所属部署、電話番号を控えていきましょう。

・訪問予定だった担当者が急遽行けなくなったため代わりの人と訪問したら、受付で混乱させてしまった!

→セキュリティの関係で、事前に訪問予定者の氏名を伝える必要がある会社は少なくありません。そのため、参加者の変更がある場合は、判明した時点で連絡するようにしましょう。人数変更も同様です。

 

まとめ

他社を訪問するときも、お客さまを迎えるときも、そのときはあなたが“会社の顔”になります。相手にいい印象を持ってもらえるよう、常にていねいでさわやかな振る舞いを心がけたいですね。

 

資料提供/記事監修:
人材育成コンサルタント クルール 池田泰美(いけだひろみ)
http://www.la-couleur.com

参考文献:
金森たかこ著「イラストでまるわかり! 入社1年目 ビジネスマナーの教科書」(株式会社プレジデント社)

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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