「理系の仕事」と聞いて、どんなイメージが思い浮かびますか?
たとえば、白衣を着て、会社の研究室にこもる生活? いわゆる「研究者」っぽい姿しか、思い描けなかったりしませんか?
でも、本当は「理系」と呼ばれる職場でも、働き方はほんとうにさまざまなんです。

今回は「社会人の先輩リケジョ」にインタビュー!
就職について、まだぼんやりしたイメージしかない人にも、いろいろ研究したけど、まだ「理系の仕事」のほんとのところがわからないという人にも、ヒントになる体験談を聞くことができました。

※本記事に記載しておりましたイベント「リケジョ応援カフェ」は、開催延期となりました。

「自分は頑固。だから視野を広げようと意識して」

今回、お話をうかがったのは、アルプスアルパイン株式会社の石山萌々子(いしやま・ももこ)さん。新素材を利用して、自動車のエンジンから生み出される高圧の電流を、車内の電装部品で使われる低い電圧に変換するコンバーターの開発などを行っているそうです。

──学生時代は、どんな勉強をされていたんですか?

材料系の学科で、半導体の内部での量子の移動のしやすさなどを、コンピュータによるシミュレーションで解析するという研究をしていました。
私が入学した学科は、物理・化学・生物といった科学の幅広い分野の勉強ができるのが魅力だなと思っていたんですね。逆にいうと、大学に入ったころは、まだ「これ」と決められなかったので、選択肢の多いところで勉強したいと思っていました。

──そこから就活へと進まれたわけですね。最初からアルプスアルパイン社に入りたい!と狙って就活されたんでしょうか?

いいえ(笑)。学生時代から弊社の名前をそんなに意識していたわけではないんです。
就活もそんなにきっちりと将来の仕事をイメージできてやっていたわけではなくて、「理系の仕事」と言ったら、研究者とか設計者として部屋にこもっているような印象しかない状態で就活をはじめたんです。
ただ、私は乗り物が好きで、車好きなので、自動車にかかわる産業に興味がありました。でも、自動車メーカーそのものに入ると、どうしても各メーカーの「色」のようなものが強く出て、かかわれる内容がせばまるような気がしたんですね。
それで、自動車の部品メーカーであれば、広くいろいろな自動車にかかわれるのではないかと思って就職活動をしていた中で、弊社と出会ったという感じです。

──「いろいろなことにかかわる」というのを、進学でも就活でも意識していたんですね?

私って結構、頑固なんですよ。親にもよく言われるんですけど、「これだ」と思うと、そのことに集中してしまうタイプなので、意識して視野を広く持つようにしようしようと考えてきたんです。

──どうして、そういう意識が持てるようになったんでしょう?

子供の頃から言われてはいたんですが、自分で頑固なんだなと思ったのは、実は高校の文理選択の頃なんです。
私は小学生のときにはもう科学が好きだったんですけど、学校の成績は英語・国語・社会といった科目のほうがよくて。
「理系に進むんだ」と決めたとき、家族にも「その成績で理系? ほんとうにやっていけるのか?」と言われて(笑)。それで、「なるほど、こういうところが頑固なのか」と思って、気をつけるようになりました。

イメージとはまったくちがう職場。でも楽しかった

──入社されて最初に配属になったのは、どんな部署だったんでしょう?

弊社の古川工場(宮城県)に配属になって、そこで車のシフトレバーを開発する部門に所属しました。

──半導体のシミュレーションとは、ずいぶんちがうような……?

そうですね、ほんとうにいちから勉強という感じでした。機構設計をしたりする部門なんですが、CAD(キャド、コンピュータで設計を行うシステム)も使ったことがなかったので、そういう勉強をしてから入社した後輩のほうがテキパキ作業ができたりということもありました。
ただ、先輩が指導員についてくれて、実務の中で設計の仕事を覚えていきました。

──自分なりにひとり立ちできたなと思ったのは、いつ頃ですか?

1年半くらい経って、自分のかかわったアイテムが実際に世に出たときですね。
私たちの部門の仕事というのは、自動車メーカーから「これくらいのサイズの中で使える、こんなイメージのシフトレバーが作れますか」と言われるところからはじまるんですが、決して受け身の仕事ではないんです。
デザイン面で「こんなカーブをつけてみました」という提案をしたり、「こんなスムーズな操作感にしてみました」ということ付加価値を付けてプレゼンテーションしながら、よりいいものを作っていくんですね。

そんな中で私が直接担当していたのは、そうやって作りあげられたシフトレバーを量産するにはどうしたらいいかを考える部分でした。
新しい設計ができて、削り出して作られるスペシャルなプロタイプがきれいにできても、それを量産するためには、金型を使ったりして、工場のラインにのせなければなりません。
実際の現場だと、たとえば機械の具合でどうしても傷がついてしまいやすいとか、作業者の人にしかわからない感想などもあって、そういうことをラインに入ってヒアリングしながら量産できる形での設計に仕上げていくんです。

たとえば、ある部品のパネルで、元の設計者は強めに押し込んではめ込んでほしいと考えていた製品があったんですね。
でも、実際には古川工場で働いている作業者の方には、女性も多くて、そんなに強い力がかけられなかった。そうすると、作業に想定よりも多くの時間がかかってしまうんです。
最終的に「いい設計」というのは、量産可能で、作業者の方々の現場の声にもあったもの、そういう全体を含めて言うんだと思うようになりました。

──ラインに入って、ヒアリングをして、というのは、白衣を着て研究室にこもるイメージとはずいぶんちがいますね。

ええ、私はどっちかというと、人とコミュニケーションをするのが得意なほうじゃないよなーと思っていたんですが、私より年上の作業者の女性のみなさんは、かえって若い女子には話しやすい印象も持ってくださったようで、いろいろな意見をいただくことができました。
自分の足で、いろんな意見をもらいにいくというのは、ほんとうにイメージしていた「理系の仕事」とはちがっていたんですけど、いざやってみると面白かったですね。
自分はこうなんだ、理系ってこうなんだ、と決めつけないで取り組んだほうが、仕事の楽しさが見えてくるのかなと思っています。

結婚を機に新しい仕事に挑戦

──いま現在は、どんなお仕事をされているんですか?

いまは、東京にある開発センターで、電源系の開発部門に所属しています。
ここは、弊社が開発した新素材のリカロイという物質を利用して、たとえば自動車がエンジンを回すことで発電している48Vの電流を、車内のいろいろな電子部品で利用する12Vの電圧に変えるコンバータなどを作る部門です。
他にも、太陽光パネルから蓄電池に電気を送る場面や、家庭用の電源から電気自動車の充電を行うためのステーションでの利用など、自動車の中だけでなく、いろいろな場面で使われる製品の設計に取り組んでいます。

──それはまた、シフトレバーの量産とはずいぶんちがうような……?

はい、ぜんぜんちがいます(笑)。
そもそも、私が古川でやっていたのはメカ(機構)の部分でしたが、ここでは回路を考えたりするエレキの設計が主になります。
最初に異動してきたときは、装置を入れる箱の部分といったメカっぽい部分を担当していたんですけど、「それは別のところでやることにしたから、エレキをやってみよう!」とあるときに言われて。

──また、いちからの挑戦ですね。

私自身、結婚を機に東京で働きたいと考えていて、上司に相談したんですが、弊社の場合は東京には開発というよりも、人事・総務といった会社を動かすための部門があるというイメージがあって、迷う部分もありました。
そんなときに、「じゃあ、あそこに行ってみたら」と言ってもらえたのが、この電源の開発部門だったんです。

伝統的に、弊社が取り組んできた商品というと、シフトレバーのような自動車のメカ的な部品が多くて、電源という分野は、さっきお話しした新素材ができたことで、会社が新たに本腰を入れて取り組みはじめた、比較的新しいチームなんですね。
なので、部署の中にも中途採用で別の会社から来た人が多かったりと、いろいろ新鮮な環境で、新しいことに挑戦することになりました。
メカの設計をやるはずだった私が、エレキの設計をやっているのも、組織として固まりきっていない、若いところがあるからですね(笑)。

──お話をうかがっていると、会社に入ったからといって、仕事の中身というのはひとつに決まってしまうわけじゃないということを、強く感じます。

そうですね。とくに弊社の場合は、「カスタム設計」が強みなので、同じ部門の仕事をしていたとしても、ひとつひとつのプロジェクトで、臨機応変にいろんな要素を考えながら仕事をするので、常に変化は感じています。
いま取り組んでいる電源の仕事にしても、欧米の部品メーカーでは比較的、「うちの仕様はこうなので、このように使ってください」というところが多いんです。でも弊社の場合は、「こんな小さなスペースしかないんだけど……」だとか「こんな変形の場所しか取れないんだけど……」という自動車や機械のメーカーのご要望にこたえて、「うちなら、そこに入れられますよ!」という提案をしていけるところが強みなんですね。

学生のみなさんも、「理系はこうだ」「自分はこうだ」とか「きっと理系の仕事っていうのは、こういうものだ」と思っているイメージにこだわらないで、選択肢を多く持てるように、自分の可能性を広げていってくれたらいいんじゃないかと思います。

本記事に記載していたイベント「リケジョ応援カフェ」は、開催延期となりました。
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