公務員は理系文系問わず、いつの時代にも人気の職種ですが、公務員として活躍している理系の人はどのような仕事をしているのでしょうか?

国公立の学校で理科や数学といった理系科目の教員というのはすぐに思いつきますが、それ以外の公務員といえば省庁や市役所の事務方など、真っ先に浮かぶのはどちらかといえば文系職のイメージかもしれません。

では、公務員を目指したい理系の人は、先生か事務職を目指すしかないのでしょうか……? いえ、そんなことはありません。実際には国家公務員にも地方公務員にも、幅広い分野で理系の仕事があります。

具体的に理系の公務員職にはどんな種類があって、どうすればその仕事に就けるのでしょうか。

理系の公務員職にはどんな種類が?

理系職の公務員には、大きく分けると次の2つの種類があります。

1.理系の専門知識を活かして行政に携わる技術系職員
2.公的研究機関で研究・分析に携わる研究員

それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

【国家公務員】理系職の仕事内容

■各省庁の技術系職員(技官)

分野に応じて、仕事の内容はさまざまですが、自身の専門知識を活かしながら、国をよりよくするためのプロジェクトに携わります。

▼仕事の内容

ごく一例を挙げれば、

建築や土木が専門の技術系職員→ 国土交通省でインフラ整備にかかわる
化学が専門の技術系職員→ 環境省で大気汚染を防ぐための制度を検討する
数理科学が専門の技術系職員→ 総務省で統計調査の指揮を執る

といったぐあいに、専門知識を活用して業務を進めます。

理系人材の知見は、技術的な観点から政策の実現を支えるために必要不可欠です。もっとも、実際に働く現場では、技術職員も文系の行政官と共に、事務も含めた幅広い職務を担当することになります。

▼なるためのルート

国家公務員試験で技術系(理系)の区分に合格→各省庁の採用試験に合格→勤務開始、が基本的なルートです。

通常の行政職の場合と同様に、国家公務員試験は総合職と一般職(いわゆるキャリア/ノンキャリア)とで分かれており、その中でさらに自分の専攻・志望にあった専門区分を選択することになります。

■国立研究所などの研究員

国家公務員の研究職は、おもに各省庁に属する国立研究所の研究員として働くことになります。それぞれの研究所では基礎研究から開発まで幅広い研究が行なわれています。

▼仕事の内容

各省庁に属する国立研究機関は2017年現在で30機関を数えます。

具体的な研究・開発内容の例についていくつか挙げると、

海上保安試験研究センター→ 海洋汚染の原因物質の分析や海難救助用の機材の開発
科学警察研究所→ 事件現場資料の鑑定や、鑑定手法の開発

などといった具合です。

詳しい研究内容は各研究機関のWebサイトでも紹介されています(JST(科学技術振興機構)のWebサイトにリンクがまとめられています)。

▼なるためのルート

採用は各機関ごとに行われるため、採用方法もそれぞれに異なりますが、基本的には、国家公務員総合職試験に合格→希望する研究機関の採用試験に応募の流れが多いようです。

応募条件は大卒以上とされることが多いものの、事実上は修士・博士課程修了者でないと採用は難しいといえるでしょう。研究職採用は非常に狭き門で、採用者数は各機関で毎年1〜2名程度のことが多く、年によって採用自体がない場合も少なくありません。深い専門性が求められる職業ゆえに、人員の異動も少なくなかなか空きが出にくいようです。その一方で、まれに各省庁の技術系職員が人事異動で研究職に就くこともあるようです。

【地方公務員】理系職の仕事内容

■地方公共団体の技術系職員

地方自治体も多種多様な理系人材を求めています。専門知識を活用しながら、住民がより安心して暮らせるまちづくりに携わります。

▼仕事の内容

災害に強いまちづくりを目指したり、環境保全に取り組んだり、学校など公共施設の機械設備を管理したり……こちらも国家公務員の技術系職員と同じく、文系職員とともに行政にかかわる幅広い業務に携わります。

▼なるためのルート

各自治体で実施される地方公務員試験の理系区分に合格すると、技術系地方公務員として勤務できるように。漁業が盛んな地域では水産系の分野に重点が置かれるなど自治体の特徴によって募集枠の数も変化しますが、全体傾向としては土木や建築、機械、電気といった区分での採用が比較的多いようです。

■地方公共団体の試験研究機関などの研究員

各自治体が設置した試験機関で、地域にかかわるあらゆる事例の研究や調査を行います。

▼仕事の内容

たとえば農林水産技術の研究や水質の試験・管理など、地域産業の発展や住民の安全のために様々な研究を行います。また、国から要請を受けた研究・調査や、民間企業との共同研究なども行なわれるそうです。こちらも、中心となる産業の種類や自治体の規模によって研究内容が変化します。

▼なるためのルート

国家公務員の研究職と同じく、こちらも大変狭き門。定期採用はほとんどなく、人員に空きが出たときだけ募集がかけられます。研究職に就くための方法も自治体やタイミングによってさまざま。研究員枠の地方公務員採用試験が実施されることもあれば、技術職員として採用された後、研究機関に配属されることもあるようです。また、医療分野など国家資格が必要な研究テーマの場合は、公務員試験を通さず研究機関ごとに直接選考が行われるケースも。

近年では公的試験期間の統廃合や法人化も多く、入職後に雇用形態が変わってしまうこともあるようです。

理系公務員を目指すにはこまめな情報収集が大切!

理系公務員は通常の行政職に比べて採用人数が少ないため、各省庁や自治体にどれだけの枠があるのかなど、こまめに情報を集めることが大切です。特に研究職の場合は募集が不定期なケースも多いので、気になる研究機関の採用情報は日ごろからチェックしておきましょう。

ひとえに公務員といっても、国家か地方か、総合職か一般職か、技術職か研究職か……などによって採用までの道のりもさまざま。でも、超難関であることは確かです。

人々のよりよい暮らしのために公共を担う、責任重大でやりがいのある公務員の仕事。目指してみてもいいのではないでしょうか!

関連ページ:公務員に研究職はあるか│FAQ│理系・研究職の求人転職はテンプR&D

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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