株式会社ニトリ
1967年創業。「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」という志のもと、家具やインテリア用品など、バラエティ豊かな製品を提案する。家具インテリア業界では珍しい独自のビジネスモデル「製造物流小売業」を採用し、商品企画から原材料調達、製造、貿易、物流、販売まで、すべてを自社のコントロール下で行っている。店舗数は台湾、アメリカ、中国も含め、540店にものぼる(2018年5月31日現在)。「配転教育」という教育制度では、多様な職種を経験し、常に新しい課題に挑戦できる。理系の素養を活かして活躍している人も多い。
http://www.nitori.co.jp/

理系の就職といえば、まず研究職や技術職を考える方が多いのではないでしょうか? しかし、実はそういった専門就職以外にも、理系が活躍できる仕事はたくさんあります。現に、専門就職以外の道で輝いている理系出身者は、みなさんが考えている以上に大勢いらっしゃるのです。

「お、ねだん以上。」で有名な家具インテリア用品店のニトリさんで活躍されている大山さんも、その一人。大学で土木を専攻したリケジョの大山さんが、なぜニトリに入社したのか? 理系専門の職種でなくても、理系の知識や発想は活かせる。そんな実体験を詳しく教えていただきました!

いろいろな仕事に挑戦したいから、職種を絞らなかった

「暮らしを豊かにする都市計画」に興味があり、大学で土木を学びました。

やはり理系ですから、就活を始めた当初は、国家公務員やゼネコン、鉄道、道路など、土木の専門就職を考えていました。でも、それ以外にも、純粋に自分が興味を持った業界を見てみようと、デベロッパーやスポーツ用品メーカーなど、あらゆる業界のあらゆる職種を探してみることに。

いろいろ見ていくうちに、どの仕事も違ったおもしろみがあって、職種をひとつに絞れなくなってしまったんです。

悩んだ結果、「自分はいろいろな仕事をやりたいんだな」と気がつきました。それで「専門就職はやめよう」と決めました。

そんなとき、合同説明会でニトリと出会います。小売のイメージが強かったのですが、ものづくりも、貿易も、流通も、すべて自社で行っている点に強く惹かれました。

「ニトリなら、さまざまな経験ができる!」と入社を決意。「暮らしを豊かにしたい」と考えていた私にとって、ニトリが「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」という志を掲げていたところも、ピッタリでしたね。

仮説を立て、検証して、次につなげる。理系の発想を活かして

入社7年目の現在は、商品部に所属し、店舗における商品レイアウトの設計を担当しています。

ニトリには約1万4千点もの商品があるのですが、それらをすべて並べられる大型店もあれば、物理的な制約があり、商品を厳選しなければならない店舗もあります。なので、どのアイテムをどの割合で配置するのかを数値で示した「商品の構成比」を、各店舗に提案しています。

土木の専門的な知識が直接活かせる仕事かというと、そうではありません。でも、理系として培ってきた客観性や発想、研究や実験でデータや数値を扱っていた経験がとても役立っていると思います。

「商品の構成比」を設計する際には、「販売数量」や「陳列量」「発注単位」といったデータから数値的な根拠を示す必要があります。扱うデータは基本的なものですが、それぞれ約1万4千アイテム分ありますから、正直、「どう扱ったらいいの!?」と途方にくれることも(笑)。

でも、数値的根拠は武器になりますから、根気強く向き合っているところです。数字に対するセンスは、すごく活かせていますね。

「どうすれば、店舗全体の売上を上げられるのか」「お客さまが迷わず買えるレイアウトとは何か」「スタッフの負担を減らすにはどうしたらよいか」、さまざまなテーマに対する解決策を提案し、売り場効率の最大化を目指しています。

「商品の構成比」を考える仕事とは別に、販売現場での「実証実験」も積極的に行っています。

直近では、新生活用のアイテムで実験を行いました。「アイテム数が多すぎて、お客さまが迷っているのではないか」という課題に対し、「店舗に陳列するアイテムを厳選することで、売上にどのくらい差が出るのか」を検証してみたのです。

例えば、白・紺・グレーの3色ある洗濯用ハンガーのうち、白だけを販売する店舗を設置しました。

そういった厳選したアイテムを増やした結果、売上の減少を最小限に抑えながら、アイテム数が減ったため、スタッフの負担を減らすことができました。

今後につながるデータを取得できたことも嬉しかったのですが、自分が立てた仮説と同じ結果が出たことが、何より嬉しかったですね。理系の方であればみなさんそうだと思うのですが、思わず「よっしゃあ!」とガッツポーズしちゃいました。

もちろん、実験では失敗することもあります。でも、その失敗も「ひとつの実験データ」として捉えれば、新しい発見になるんですよね。

この発想は、理系としてこれまでたくさんの実験を経験してきたから生まれたものだと思います。失敗してしまったときに、「上手くいかなかった原因を追求して次につなげよう!」と、チームのみんなをプラスの方向に引っ張っていく役割を担っているのかもしれません。

今後も、PDCAのサイクルをうまく回し、さまざまな実証実験に挑戦していきたいと思います。

店舗で働く仲間の顔を浮かべながら、働きやすさも設計する

ニトリに入社して7年目になりますが、すでに3つの職種を経験しています。

ニトリでは数年ごとに異動していろいろな経験を積める「配転教育」という教育制度があります。現在の部門に異動するまでは、大型店舗の運営と、都内の新店舗の立ち上げに携わりました。

正直、店舗にいたころは、「もっと自分のスキルを活かしたい。早く本部に行きたい」と焦る想いでいました。ですが、振り返ると、店舗での経験がなければ、今の仕事は成り立っていないと思います。理系特有のロジカルな考え方はもちろん大切ですが、店舗での「実感値」がなによりも財産になっているんです。

店舗では、あらゆる仕事を覚えました。入社5年目からはフロアマネージャーとして、50名ものスタッフの作業管理を作成しました。売上目標を達成するためには、作業効率を高めて、生産性を上げる必要がある。どの作業に、どのくらいの時間がかかるのか、自らの経験と照らし合わせながら、綿密に設計したことは今の仕事に活きていますね。

商品のレイアウトを考えるとき、商品をかけるフックやラックなどの「什器」と呼ばれるものも設計するのですが、それらの重さや大きさひとつで、スタッフの作業時間や負担は変わります。数字を並べてクールに設計するのではなく、店舗で一緒に働いていた仲間の顔を思い浮かべながら、彼らにとって最良なものを作るように心がけています。

スタッフの皆さんが働きやすい環境を設計することも私の役目だと思っているので、店舗を経験しておいて本当によかったと思っています。

「日本一売るバイヤー」を目指して

ニトリの競合といえば、少し前までは、家具量販店がメインでした。でも今は、アマゾンや楽天など、ECサイトを運営するWebサービス会社も競合といえます。

そういった新たな競合も視野に入れながら、実店舗だけでなくオンライン販売も進めていますし、今後は、店舗とオンラインの融合も、強化すべきテーマのひとつだと考えています。これからも「お客さまの買いやすさ」を追求していきたいと思っています。

私個人としては、今後「バイヤー」の仕事に挑戦したいと考えています。

当社でいうバイヤーは、日本中、世界中の店舗で、何をどれだけ売るのかを決める人たちです。今の仕事では、理系の発想を活かしながら「今ある商品」で、店舗ごとの商品構成を考えていますが、バイヤーの仕事では、「新たにどんな商品」を投入したら、よりお客さまが喜ぶかを考えることができます。

自分で考えて、仲間と協力して売り出した製品が、世界中のお客さまの手元に届く。その感覚を味わってみたいですね。国内だけで400以上の店舗数を誇るニトリですから、「ニトリのバイヤーは、日本一売るバイヤー」といえると思うんです。いつか、「日本一売るバイヤー」になりたいです。

就活生へのメッセージ

私は、専門就職を選びませんでした。一般的な理系の就職とは違うかたちでしたが、すごくよかったと思っています。

もちろん、多くの方は専門就職を選択されると思いますが、それ以外にも選択肢が広がっていることを知ってほしい。いきなり興味があるものに絞ってしまうのは、もったいないです。いろんな企業、いろんな仕事を見てもらいたいと思います。

私自身、ひとつの職種に絞らずに探してみたから、ニトリと出会うことができました。ニトリで、いろいろな仕事に挑戦して、さまざまな経験をして、それらすべてが私の強みになっています。

ぜひ、たくさんの会社を見てみてください。絶対に損はしませんよ!

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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