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Q:原さんが所属する生活者行動研究所では、どんな仕事をしているのですか?

私が所属する生活者行動研究所の仕事は、お客様本人ですら気づかないようなニーズや不満を行動の中から見つけ出し、商品開発の種を見つけることです。
 
メーカーが商品開発をするときにはよくアンケートをしますが、それだけではお客様の本音はなかなか探れません。それにお客様がアンケートで答えるような不満やニーズはどこの会社でも気づいていて、すでに商品開発をしています。
 
そこで、私たちがよくやるのは家庭訪問調査です。私たちが直接それぞれのお宅にうかがって、朝から晩まで、暮らしているところをビデオで撮影しながらずっと見ているのです。その方が買い物に行くのであれば、一緒についていきますし、お風呂での様子を撮影することもあります(笑)。
 
 
 

Q:家庭訪問調査の中から生まれた商品にはどんなものがあるのですか?

洗濯洗剤HYGIA(ハイジア)という商品は、家庭訪問調査の最中に見た、こんな行動がきっかけになりました。そのお宅の奥様とお子さんが一緒に散歩に行き、うちに帰ってきたときに、子どもの服を全部脱がせ始めたのです。
 
「エッ!」と思ったのですが、奥様はよその家庭でも同じようにしていると思っているので、当たり前のようにやっていました。当然、この行動はアンケート調査には出てきません。
 
奥様に話を聞くと、「外には得体の知れないバイ菌がいろいろあって、それが服に付着しており、それを家の中に持ち込むのが嫌だから」ということでした。それで玄関で服を脱がせて、子どもの洋服を着替えていたのです。
 
その行動をきっかけに、得体のしれない菌から子どもと家族を守るために“洗うたびに衣料の抗菌力を高める”というコンセプトでハイジアという商品は開発されています。

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Q:大学はどのようにして志望校を決めたのですか?

高校時代、将来は自分の好きな理系を活かしながら生活者と直接かかわるような仕事をしたいと思っており大学は家政学部を志望しました。
 
奈良女子大を目指したのは、私が通っていた高校が当時女子高だったのですが、男子がいない気楽な雰囲気が私には合っていて、大学も女子大に行きたいと思ったからです。それに仏像や歴史も好きだったので、奈良に行きたいという思いもありましたね。
 
 
 

Q:女子大の良さはどんなところにありますか?

私が学んだ被服科は当時、生徒が30人ぐらいしかいなかったので、先生と生徒の関係が自然と深くなっていきます。例えば卒論をみんなでやろうとすると、女性の先生が「今日おにぎり握ってきたので食べていきなさい」と言ってくれたりするんです。そうすると、先生の家庭での姿がちらっと見えたりするんです。結婚して、家庭を持って、研究もちゃんとしていて、本当に素敵だなと思いました。当時の大学には、そういう先生が何人もいました。
 
まさに社会で活躍する女性のロールモデルを間近で見ることができたことは、私にとって大きな意味がありました。私が今も仕事を続けているのは、大学時代の先生たちとの出会いが大きいと思います。
 
 
 

Q:これからの夢を聞かせて下さい。

女性が社内で少しでも活躍できるようにサポートしていきたいと思っています。同時に、私は今、日本女性技術者フォーラム(JWEF)に入会し、理系の女性たちが活躍できるようにお手伝いする活動をボランティアでやっています。
 
ライオンは女性の育児や出産の支援制度が整い、女性の活躍推進に向けた取り組みも進んでいますが、社会全体を見渡すと、まだ必ずしもそうでないところもあります。そういうことで悩んでいる方たちの相談にのったり、自分の体験を話したりして、参考にしてもらえればいいなと思っています。それがリケジョの活躍の場を広げることに役立つと思っていますので、自分がこれからやりたいことのひとつです。
 

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(取材・文=川原田剛 写真=井上孝明)