11/18 ヒカリエ Creative Studio MOVにて、Rikejoダビンチセッションが開催されました!
これは、9月に開催された「Rikejoのためのプレゼンテーション講座」のステップ2にあたります。
プレゼンテーション講座に参加してくれた大学院生リケジョの中で4名の方が参加してくださいました。
プレゼンテーション講座終了後も、宮野先生にご指導を受けながら、さらにブラッシュアップしたパワーポイントとなって参加です。
 
なぜ、「ダビンチセッション」っていうのかですが、もちろんかの有名なレオナルドダビンチから取っていいます。ダビンチは、偉大なる芸術家でもあり、建築、土木、人体、機械などなど様々な科学技術に通じ、極めて広い分野に偉業をなした人であります。
これから科学に携わる人は、社会との繋がり・社会への貢献を意識して研究活動を行い、また、その成果をわかりやすく社会へ伝えていく必要があり、そのためには、「自身の研究の学術的な位置づけや社会的意義を深く考え、また、その内容について専門外の人にもわかりやすく伝えることができるようになる」 といったことを意識し、実践し、大局的に科学を考えらえる人材となって頂きたいという願いが込められています。
従って、今回のセッションでは、彼女たちのプレゼンテーションに優劣をつけるのが目的ではなく、彼女達のプレゼンテーションを聞いて、色々みんなでディスカッションすることで、社会と研究・科学との繋がりについてみんなで考えようというものです。
 
今回は30名以上が参加する盛況なイベントとなりましたが、学生リケジョのみならず、社会人リケジョ、大学の教員や、企業の人事担当の方や、メーカーでの要職にあられた方々、金融や公認会計士といったビジネス会の方々など、様々なステータスの方にお集まりいただいたイベントとなりました。
 
 

まずは、長年大手企業の研究開発マネジメントに取り組んでいらっしゃった石岡先生に、キーノートスピーチとして、
「これから研究を目指すあなたへ
   ~これからの社会における科学の役割と、科学に関わる者に必要なこと」
と題して、企業研究についてお話いただきました。
 
石岡先生は、この企業をご退職後も、各方面がご活躍されており、最近では、サイエンスコミュニケーションの活動にも力を入れられています。
 
スピーチでは、海外では女性科学者が重要なポストで活躍している状況であるのに、我が国においては最先端研究者の30人の中に女性が誰もいないこと、http://first-pg.jp/about-us/about-30.html、また、大手企業の研究所における企業ミッションと研究活動の関係や、歴史等大変興味深いお話をしていただきました。江戸時代には既に米国へ研究者派遣をしていたそうです。
 
さらに、研究の進め方として、エコシステムやオープンイノベーションといった研究者だけで殻に閉じこもり行うものではなくて、その地域や分野に関わる様々なステータスの人が集い行うという新しいスタイルについてご紹介いただいたり、そのためにも、サイエンスコミュニケーションが必要といったお話もして頂きました。
サイエンスコミュニケーションも単に伝えるたけではなくて、サイエンスを理解した上で、それを使ってどういった社会を作っていくのかを一緒に話し合うステージ、つまり、共に創るといったステージも求められるようになってきているようです。
 
しめくくりに、長年の研究活動のご経験から、企業研究所の役割やこれからの研究者に必要なことについてもお話いただきました。
企業研究所としては、「競争の原動力となる」「知識の宝庫となる:そこに行けば何かわかる」「基盤技術を高度する」「経営の水先案内人になる」「基礎的な科学技術の発展に貢献する」といった点をお話しいただきました。また、科学技術の発展に貢献するという姿勢は、基礎研究以外の応用研究の人も心に持つべき志ではあるが、やはり最後には、その企業の事業にするといったスタンスが必要だろうとのことです。
 
また、これからの科学者に求められることとして
・広い教養と専門性を持つΠ型の人間を目指す
・好奇心を常に持つ
・打たれ強さ
・高い教養力
・サイエンスコミュニケーション力
・友達を大事にする
・多様性の尊重
・国際性(世界から尊敬される存在になろう)
・夢と情熱
といったことをあげていただきました。
 
科学技術に関わっていらっしゃった石岡先生が、特に「教養が大事」とおっしゃるのは印象的でした。ともすれば専門バカになりがちですが、その辺り「Π型」人間を目指す必要があるのかもしれません。
また、「友達を大切にする」というのも、面白い視点ですが、こうした絆から新しい技術が生まれたり、普及が進むといったことがあるそうです。
一個人としてもそうですが、科学に携わる人としても、友人が大切というのは若いリケジョたちも感銘を受けたのではないでしょうか。
 
最後に、パソコンの父と呼ばれるアラン・ケイ の言葉をプレゼントしていただきました
“The best way to predict the future is to invent it.”
(未来を予測する最善の方法は、未来を開発することだ)
ステキな言葉ですね。科学に携わるものの心意気とロマンを感じます。
今回参加した人の中には、大学1年生や2年生などの低学年のリケジョもいましたが、今まで、このような科学技術全般のお話を聞く機会はあまりなかったようで、貴重な体験になったようです。

 
そして、いよいよ、大学院リケジョによるプレゼンテーションです。
それぞれ、5分+質問5分の持ち時間です。
テーマは、
「ヒト皮膚構成分子合成 のメカニズムについて」
「初めて知るRingの世界と魅力 」
「心臓ペースメーカー細胞を誘導する因子について」
「人体はサイエンス?!ミステリアス!!?お答えしましょう!遺伝のいろは?」
です。
みなさん、プレゼンテーションのパワポ資料のみならず、プレゼンテーションの自身も大変わかりやすく、すばらしい出来栄えでした。

 
質問も多く寄せられました。参加したリケジョからも、かなりサイエンス的な質問もありましたし、ビジネス界の方から、その研究の他研究とのアドバンテージなどについて、ビジネスといった視点からの質問もありました。
こうした、様々な質問がでるのも、ダビンチセッションならではです。
 
 

 
その後、各グループに分かれ、それぞれの発表者に対して、フィードバックをしながら、非専門家に対するプレゼンテーションやサイエンスコミュニケーションについて何が必要かというディスカッションをしました。
特に全体として、一般の人に伝えるためには、その研究のポジショニングをはっきりすることが大事という意見が多くきかれました。
その研究がどのくらい他と差別化しているのか、最終的なゴールのどの位置にあるのかといったことが、ビジネスの視点として大事なようです。
そういったことが明確でないと、例えば研究費支援をする時にも、有用さが明確になりません。ついつい自分の研究のことを話すことに終始しがちですが、そのような視点が必要といったことは、みなさんしみじみ感じたようです。
 

また、自分が基礎研究をやっていて、その研究の実用化研究に携わっていなくても関係ありませんというスタンスではなくて、その実用化についても意識・言及でき、実用化にこういったことでつなげますといったような意識を持つことも大事だといった指摘もありました。
 
それぞれのグループで、発表者に対するフィードバックを行うという形ではありましたが、参加したリケジョは、大変勉強になったようで、自分もこれから参考にしたいといった声も多く聞かれました。

今回のセッションでは、まずは、各発表者のレベルの高さに対して驚嘆される方が多かったです。
「同世代がすばらしいプレゼンをするのが刺激になった」
「レベルの高さや参加者の熱心さに、日本も捨てたもんではないと感じた」
といったお声をいただきました。
また、単純に自分とは違う研究について知ることができておもしろかったという
感想もありました。
 
さらに、ディスカッションを通じて、「遠いようで企業の持つ問題意識と研究者の問題意識が意外に近いと感じた」感想も持たれたようです。
 
手前味噌ではありますが、今回のリケジョ×研究×リケジョを取り巻くステークホルダーによる
研究プレゼンテーションを通じたディスカッションという構図は、色々な意味で、参加者全員に気付きや刺激を感じていただけるプログラムとなっていたように思われます。
 
また、参加した方々のそれぞれのバックグランドやリソースを活用していただく場にもなったと思われます。もう一度開催してもらいたいとのリクエストも多く寄せられておりますので、「研究プレゼンテーション」や「様々なステークホルダーの方とのコラボ」というものは、今後の活動のキーワードとして、考えていきたいと思います。
 
ご参加いただいた皆様、キーノートスピーチを頂きました石岡先生、そして、プレゼンテーションをして下さった大学院リケジョのみなさん、本当にありがとうございました!(矢部)