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リケジョからの質問

森林科学に進むか、進化学か。

たけさん
質問日:

2013.04.13

こんにちは。広島の高校三年生です。

私は、進化学や、自然、環境などに興味があり、学べる大学を探していましたが、進化学を研究している大学を見つけることができなかったため、
京都府立大学で森林科学を学び、将来は自然保護に関する仕事をしたいと思っていました。
しかし、最近になって金沢大学の理工学域自然システム学類に、植物系統進化学研究室というのがあることを知りました。
今、その二つの大学で進路を悩んでいるのですが、大学のホームページなどを見ても、森林科学という学問は、どんなことが学べるのか、どんな実習があるのかがいまいちよくわかりません。また、体力にあまり自信がないことも不安です。

木材の利用などにはあまり興味がなく、興味があるのは生態や、森林の保全などです。
森林科学が、どんな学問なのかをよく理解したうえで、進路を決めたいので、
その分野を学んでいる方に、詳しく教えていただきたいです。

もし、京都府立大学や金沢大学のかたがいらっしゃれば、大学の様子も教えていただきたいです。

よろしくお願いします。

先輩リケジョからの回答2 回答

たけさんさん、はじめまして。

私は宇都宮大学の森林科学科を卒業、修了しました。
森林科学がどんな学問なのかを中心に、以下、参考になれば幸いです。

まず「森林科学」という学問ですが、狭い意味で言うと、昔の「林学」を指します。目的に合わせて、土壌づくり(≒山づくり)から一本の木を育成し、製品に仕上げるための術を学びます。
しかし近年は、生物多様性や地球温暖化など、グローバル、環境面の分野もかなり含まれます。純粋な「林学」のみではなくなっているため、新たな学問分野として呼ばれるようになったようです。

林学は理系でも文系でもありません(農学も然り)。
人が生きるための産業を学ぶ学問なので、自然科学のみならず、人文科学、社会科学すべてを一通り学ばなければなりません。
例えば、社会科学分野で言えば、経済学は必須、政策学(法律関係)も学ぶことになるでしょう。

理学部と大きく異なることは、人の生活を常に考えなければいけないこと、つまり「真理の追究」が目的ではないことです。
「社会」という、日々変化に冨みまくり、もちろん唯一絶対の答えなど存在しない世界の中で考えます。

また、自然を「保護」することが目的でもありません。あくまでも「保全」が目的です。自然が持つ力をいかにうまく利用して人の生活を豊かにするか、これに尽きます。

ですから、林学的に言えば「木を伐ってはいけない」はとんでもない間違いです。
「どういう木は伐ってはダメで、どういう木をどういうタイミングで伐るのがベストか、そのためには何が必要か」を考えます。

私は森林科学の中でも生態学、その中のさらに、野生鳥獣管理学という学問を専攻していました。この学問も前述の通り、野生動物を「保護」することが目的ではありません。あくまで「管理」。

例えば、、、近年は増えすぎたシカのために、甚大な農林業被害が出ている地域がある。被害を軽減させるにはどうすればよいか?
-シカを耕作地等に侵入させない対策も考えなければならないが、現実的にはシカの個体数を管理する、つまりシカを駆除する(殺す)方が○。
ー費用対効果が最大となる駆除計画を立てるには?

といった流れで考えていきます。かなりざっくりですが。
「何のためにそれをやるか?」と、常に目的意識を強く持つべき学問です。
みんなで議論したり、文献を読みあさってまとめて発表するといった、実務型の講義も多かったです。

「大学で学ぶ」ということだけを考えると、山をフィールドにした実習も多いため、タフと感じるかもしれません。

例えば、、、山に作業道(木を伐り出すための道)を通したい。
ーまず地図上で道をひく。
ー現地に行って、図面どおりにいくかどうか調べる。
といった内容のものがあります。
この現地調査というのがタフである場合が多いですかね。
例の場合だと、道なき道、おそらく傾斜がそこそこある山を歩くことになったりします。

しかしそれ以上に、自然を相手にする仕事、現場の厳しさをほんのちょっぴりでも感じることは大きな経験値となると思います。

今の仕事とは直接は関係ありませんが、私は森林科学を学んで本当によかったと思っています。
学んだ内容がよかったかどうか云々というよりも、学び方を学んだことが最大の収穫です。

目的を持って、あらゆる角度から考え、取捨選択していく。
情報があふれている世の中で、この考え方は重要だと思います。


以上の説明でも、かなりざっくりかと思います。。。
また何かあれば遠慮なく質問してくださいね。

お礼日時:

2013.05.06

森林科学についての、詳しい説明をありがとうございます。今までなんとなくしかわからなかった内容をよく知ることができました。保護ではなく、保全が目的なのですね。自分がしたいことをしっかり考えて、進路選択をしようと思います。ありがとうございました。

たけさん、こんにちは。高校3年生ということで、進路を慎重に選ばれているのですね。
私は九州大学理学部で博士号を取り、今は大学の研究室で植物の保全に関わる研究をしています。
進化学を研究している研究室を見つけられなかったとありましたが、進化、森林、保全は関連が強い分野で、3つを一緒に学べる大学もありますよ。

例えば、たけさんの広島から近く、私の出身の九大理学部生物学科では植物や動物など生物の進化学、そして保全生態学(生物多様性など生き物に注目した自然保護)の授業や研究室がありますよ。
九大では理学部生物学科と農学部の地球森林科学コースの研究室が一緒になって、アジアの国で大量に伐採されている森林をどうしたら守れるだろうか?(保全の研究)、伐採されてしまう前に新種の木を見つけ出そう、その新種の木は世界でどれくらい珍しい木か、他のどんな木と近縁なのかを調べるために遺伝子を調べよう(生態学の研究)という研究をしています。学生さんは、授業や実習で森林の調査や実験の方法を学び、4年生になったら先生や研究員達と一緒に山で調査して、卒業研究を作ります(体力に自信がない場合でも、実験など体力を使わない作業で活躍できますよ)。

進化と森林と保全が学べて、実績がある大学だと、東北大学や横浜国立大学も有名です。

ところで、京都府立大の森林科学科の森林生理生態学研究室のHPを見たところ、進化と保全が研究できるみたいですよ!
例えば、主な研究テーマ で一番上の「環境適応」、これは進化学ですね。次に「森林生態系の保全」、自然保護や生態学の研究ですね。京都府立大の森林科学科でも、やりたいことが叶えられると思いますよ。

他にも色々な大学の研究室のHPを見て、興味が持てる進路先を探してみて下さいね。
お礼日時:

2013.05.06

詳しい回答をありがとうございます。いままで、進化学と森林科学は別のものだと考えていましたが、そうではないのですね。九大にも興味がわきました。京都府立大のことも調べてくださり、ありがとうございます。また、自分でも調べてみようと思います。

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