はじめまして、社会人リケジョのほりかわです。勤務先の科学館で、夏休みの子ども達に奮闘中です!突然ですが、夏といえば?・・・海?祭?花火?…Yes!太陽電池!ということで、太陽の季節を待ち望んでいたアツ~い研究をご紹介します!
 
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写真:ウィキメディア・コモンズより
 
 

花の色素で発電できる

 
東京大学教養学部の内田聡先生が研究しているのは「色素増感太陽電池」。太陽電池は聞いたことあるけど、色素増感って…?色素増感太陽電池は、植物の光合成がモデルとなっています。花の色素を用いたフラワー発電など、色素は光を吸収すると電子を放出するため、光エネルギーを電気エネルギーに変換して発電することができるのです。
 
 

高い発電効率とデザイン性

 
太陽電池というと、シリコン系太陽電池の屋外設置が主流ですが、色素増感太陽電池は、曇りの日の屋内でも発電することが可能!屋外に設置すると、風雨による劣化や、鳥の糞などの汚れにより発電効率が徐々に落ちてしまいます。色素増感太陽電池は、こうした心配がない上、色素の種類によってパネルの色にバリエーションがあり、インテリアとしてのデザイン性からも注目を集めています。
 
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超薄型!まるで下敷き!

 
さらに驚くのは、その薄さ。2枚重ねても下敷きほどの薄いパネルは、とても軽量。両面に張り合わせれば、日が差す方向によらず一日中、発電することができます。たとえば、大規模なビニールハウスで行う農業は、ファンを回して空調管理をしています。ビニールハウスの天井から色素増感太陽電池の両面パネルを吊るせば、栽培の邪魔をせずに、必要な電力をその場で賄うことも可能になるかもしれません。
 
 

震災の避難生活を支えた灯り

 
内田先生が所属する瀬川研究室は、東日本大震災の被災地に色素増感太陽電池付ライトを無償で貸出提供。実際に使われた簡易ライトに刻まれた沢山の傷跡は、被災地で重宝されたことを物語っていました。「避難所生活で心身ともに滅入っているときは、充電待ちの列に並ぶ気力も持てなくなるんです。これなら、晴天の日に1度充電できれば3日間使えました」と内田先生。太陽の光さえあれば、発電できる。エコの側面から大きく期待される太陽電池ですが、緊急時にもその強みがいかんなく発揮されていたのです。
 
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さて、次回はそんな色素増感太陽電池がどうやって作られているのか、研究室に潜入取材!太陽電池の最先端の作製技術をご紹介します。お楽しみに!(堀川 晃菜)

 


研究者 プロフィール

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内田 聡(Uchida Satoshi)
東京大学 教養学部附属教養教育高度化機構 環境エネルギー科学特別部門 特任教授
 

▶ 東京大学 瀬川研究室  http://www.dsc.rcast.u-tokyo.ac.jp/
▶ 内田先生のwebページはこちら http://kuroppe.tagen.tohoku.ac.jp/~dsc/cell.html

 
 

ライター プロフィール

profile

堀川 晃菜(Horikawa Akina)
 
知りたい・伝えたい、が原動力の「つたえるリケジョ」
同じことでも伝える人や伝え方によって、生み出されるものが違うからこそ、
究極のコミュニケーションって何だろう、と思います。企画力、表現力を磨きたい。
 
かつての専攻はバイオテクノロジー、研究パートナーは大腸菌。
農薬&種苗メーカー、科学館勤務を経て、ライター・編集者に。