私たちが日ごろ口にするあらゆる料理は、さまざまな化学反応によって生まれています。調理とは科学であり、レシピとはある料理を再現するための“実験手順書”でもあるのです。今回ご紹介する「理系すぎるお料理レシピ」は、「天ぷら」。えび天とかき揚げをおいしく作るコツを詳しくご紹介するので、ぜひ読んでみてください。

サクサクおいしい天ぷら(えび天・かき揚げ)の再現方法とその考察

目的

サクサクのえび天とかき揚げを作る。

方法

〈材料〉2人分

■えび天
・無頭えび 6尾
・小麦粉 えび重量の5%

■かき揚げ
・玉ねぎ 1/2個
・にんじん 1/3本
・ちくわ 1本
・小えび 50g
・小麦粉 大さじ1

■衣・油
・卵 1個
・冷水 200ml
・小麦粉 140g
・揚げ油 揚げる鍋の底から3.5㎝以上になる量

〈手順〉

■えび天
1. えびは尻尾から1節残して殻を剥き、背わたをとる。
2. 剣先(しっぽの先)を切り落として水気をしっかりと拭き取る。
3. えびの腹側から身の真ん中まで切り込みを入れ(4箇所)、背中を押して身をまっすぐにのばす。
4. えびに小麦粉を薄くまぶす。

■かき揚げ
1. 玉ねぎは5mm幅の薄切り、にんじんは長さ5cmのせん切り、ちくわは長さ3cmの短冊切りにする。小えびは殻、背わたをとる。
2. [1]に小麦粉を加えて混ぜる。

■衣作り・揚げ
1. 小麦粉はふるっておく。揚げ油を鍋に入れて熱しておく。
2. ボウルに卵を割り入れほぐし、冷水を加えてよく混ぜる。
3. [2]に[1]の小麦粉を加えてさっくりと混ぜる。一部の小麦粉はそのまま残っている状態でも構わないので、混ぜすぎないようにする。
4. かき揚げの具材に、ひたるくらいまで[3]の衣を加えて全体を軽く混ぜる。
5. お玉に[4]をとって170℃に熱した揚げ油の中に次々と落とし、30秒ほど経ったら油の中でひっくり返す。さらに1分ほど揚げて、カリッとなったらバットに上げる。余分な油が切れたら完成。
6. 油の温度を180℃に熱し(えびは野菜を使用するかき揚げよりも火が通りやすい食材なので、高めの温度で短時間調理が適しているため)、えびを衣にひたし、尻尾を持って油の中に静かに入れる(一度に投入する食材の量は、油の表面積の1/2~1/3程度を目安にする)。えびが浮き上がってきたらさらにスプーンで衣をたらして花衣をつける。
7. ときどき返しながら50秒ほど揚げ、衣が固まったらバットに上げる。余分な油が切れたら完成。

結果

サクサクプリプリのえび天と、サクサクふわふわのかき揚げが完成した。

考察

天ぷらをサクサクにおいしく仕上げるには、以下のポイントを意識するとよい。

■衣の作り方
小麦粉は、水と混ぜることで粘り気が出てくる。これは小麦粉に含まれるタンパク質のグルテニンとグリアジンが水を吸収することによってグルテンが形成されるためである。天ぷらの衣は、粘り気が出るとサクッと仕上がりにくくなる。そのため、衣を作る時は小麦粉の粘りが出ないように注意する必要がある。水温が高くなったり、時間が経つとより粘りが出やすくなるため、衣を作る際は「冷水を使う」「卵水に小麦粉を加えたら混ぜすぎない」「一度に作りすぎない」ことが重要だ。

■揚げ方
えび(動物性食品)は薄い衣で揚げ時間は短く、火を通しすぎないことでサクサクプリプリの食感に仕上がる。かき揚げ(植物性食品)は厚めの衣で食材の水分蒸発を防ぎながらじっくりと揚げることで、サクサクふわふわの食感に仕上がる。また、一度に多くの食材を鍋に投入すると油の温度が下がり、サクッと揚がりにくくなってしまう。そのため、一度に投入する食材の量は、油の表面積の1/2~1/3程度を目安にする。揚げる順番は匂いが強い食材(主に動物性食品)を後にすると匂いが移りづらくそれぞれの味が引き立つため、今回はかき揚げを先に揚げた。

結論として、サクサクおいしい天ぷらを再現するには、

1. 衣には冷水を使うとともに混ぜすぎないよう注意して、グルテンによる粘り気を抑える
2. 動物性食品は薄い衣で揚げすぎに注意、植物性食品は厚めの衣でじっくりと揚げる
3. 一度にたくさん揚げすぎない。また、植物性食材→動物性食材の順番で揚げる

ことが重要である。


サクサク食感がおいしい「天ぷら」。自分で作るとしなしなになってしまったり、上手に揚げるのが難しい印象がありますが、ポイントを押さえれば自宅でもサクプリ&サクふわを再現できます。みなさんもぜひ試してみてくださいね。
理系・文系を問わずレシピに潜む科学現象を理解することは、料理上達への一歩。次回もお楽しみに!

フローチャート作成参考:
『応用自在な調理の基礎 フローチャートによる系統的実習書 日本料理編』
河内一行ほか/家政教育社
(記事監修/管理栄養士 棚橋伸子)

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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