真新しい施設で授賞式!

2019年7月5日に資生堂サイエンスグラントの第12回、授賞式が開催されました。

授賞式会場は資生堂グローバルイノベーションセンターです。このセンターは、都市型のオープランラボとして4月にできたばかりで、資生堂のこれからのイノベーションを担う施設とされています。この会場での初めての授賞式となり、記念すべき回となりました。


資生堂グローバルイノベーションセンター内の様子 ※資生堂グローバルイノベーションセンターの1Fと2Fは一般公開されています。

そもそも、資生堂サイエンスグラント創設の目的は「女性研究者の研究活動を支援することにより、指導的女性研究者の育成に貢献する」です。いまだに日本の研究者の女性比率が16.2%と、アメリカ33.4%、アイスランドの47.2%に比べ低い中、こうしたグラントは女性研究者を支援し、キャリアップを目指す女性研究者の背中を押すことに貢献します。特に、本グラントは、助成金の使途の自由度が高いことも特徴的となっていて、例えば、助成金で、子育て期間のアシスタントの雇用やベビーシッター費にも使うことができ、女性研究者のワーク&ライフを支えるものになっています。

また、「資生堂サイエンスグラントを受賞すると、いいことがあるよ!」というのが歴代の受賞者の方々からと言い伝えられているそうで、実際に本賞を受賞して、「その研究費で大きな研究の成果を出した」「パーマネントな職を得られた」など、キャリアアップし、独立したPI(principle investigator)となることにつながっていっているケースが多いそうです。

受賞者の方々からも、

  • ・任期付きのポジションにいるが、過去に多くの方がこの受賞を機に独立されているそうなので、グラントを活かして研究に励みたい
  • ・海洋研究者の女性研究員が少ないので、この研究活動の成果を通して海洋研究の魅力を伝えたい
  • ・教えている女子学生の手本となるためにも、受賞者の先生方の後を追えるように今後も一層学生と頑張りたい
  • ・子育てとの両立に苦労し研究が進まず悩んでいたが、本賞の受賞が大変はげみになった。これを活用して、家庭にも目を向けながら研究も頑張りたい

など、大変前向きな受賞の言葉が述べられていました。

今年度の受賞者の方々。

また、昨年度受賞者の丸山 美帆子先生(大阪大学大学院工学研究科 日本学術振興会特別研究員 RPD 京都府立大学大学院生命環境科学研究科特任講師)からは、今年の東京大学の入学式での上野千鶴子先生の祝辞を話題に、

「上野千鶴子先生のお話は、自分自身の考え方の本質に目を向けることになりました。社会には、色々な価値観の違いが存在しており、自分の研究者としての道を見直してみると、女性特有の難しさもあったし、女性だからこその優遇もあったと思います。

自分自身が今、何ができるかと考えた時に、いいことも、悪いことも、食べつくして栄養にするしかない。目の前のものに粛々と取り組むことで、よい仲間ができて、明るい未来が拓けていくと思っています。受賞者の皆さんは、サイエンスがはすごく楽しい、サイエンスの中で何か成し遂げたいという気持ちがあると思うので、その気持ちを忘れずに共に同士として頑張りましょう。未来の同志たちの出会いに感謝します」

と、受賞者の方々に力強いエールが送られました。
 
さらに、社外審査員の福井工業大学矢部希見子先生(環境情報学部教授、学部長)も、SDGsのジェンダー平等と上野千鶴子先生の話に触れられ、

「研究のスタイルにはそれぞれあり、今までの男性社会の中での研究や働き方だけが研究の仕方ではありません。誰も他の人がやらない自分自身が気づくようなことを研究していけばよいと思います。研究の道を目指すと、自分自身の能力に疑問を持つこともあり、私自身もそう感じたこともありました。その時に、『今はこのような状態だけれど、どこか私しか見えないことがあるのでは。そこをやろう』と思ってやってきて、今につながっています。それが、ジェンダーを含めた多様性ということの目的ではないかと思っています。

今流行りの競争の厳しいサイエンスの分野もありますが、自分は、そういったところで勝ち抜いて楽しいと感じる人間なのかということを自問自答したらよいのではないかと思います」

と女性研究者としての生き方のヒントが話されました。さらに、「本受賞をしたからには、次の段階に進み、自分のオリジナルは何かを考え、自分の研究分野を広げて行ってほしいと思っています。女性研究者を増やすためにも、女の子たちの手本となり、能力はあるがその能力に気づいていない女子(特に地方にいる女の子)の刺激となってほしい」と、サイエンスグラントの本来の目的である「指導的な立場になる研究者を育成する」ことも、改めて念押しされました。

授賞式に参加してみて、それぞれの「知りたい」を深めていくことが研究者であり、改めて、その楽しさとご苦労、キャリアを進めていく上で己を知り地に足をつけて進む事の大切さを知ることができました。

そして、なんといっても、どの受賞者の方も生き生きとして自分の研究の楽しさを語る姿は、これこそがリケジョのステキさだと、改めて感じることができました! 

受賞者の皆様の今後のご活躍を期待します!

取材・文/矢部純代(エンパブリック)