「理系に進みたいけど、身の回りに理系の女性がいなくて、話が聞けない……」。そんな悩みを抱えたリケジョのみなさん、多いですよね。女子の理系学部への進学率が上がっている現在でも、大学や理系の職場では、まだまだ男性の比率が高いのが、日本の現状。実際に大学の理系学部や大学院に進んでからも、「リケジョとして社会で働く姿のイメージがわかない」といった壁にぶつかる人も少なくありません。そんな中、参加したリケジョたちから「この体験がブレイクスルーになった!」「新しい考え方に触れて、視野がひらけた!」と大好評を集める、知られざる体験プログラムを主催している企業があるといいます。

その企業とは、日本IBM。
AI(人工知能)のIBM Watsonを駆使して、様々な社会的課題やビジネス上の課題に対するソリューションを提供している世界的なIT企業です。

IBM Watsonによる性格診断も活用しながら行われるという、同社の「⼥性リーダーによる理系⼥⼦学⽣へのメンタリング・プログラム」(以下、メンタリング・プログラム)では、いったい、何が行われ、どんなアドバイスがなされるのか?

今回、Rikejoではその参加者のみなさんにインタビューを行うことに成功!
これから理系学部を目指す人にも、すでに理系学部に在籍している人にもヒントになる、さまざまなお話をうかがうことができました。

知られざる「メンタリング・プログラム」の内容とは?

日本IBMのメンタリング・プログラムは、主に、同社の女性社員の卒業大学で募集を行っているとのこと。そこで応募してきた大学生と、日本IBMで働く「先輩リケジョ」のメンターがペアを組み、1対1で向き合って取り組むそうです。

今回お話を聞いたプログラム体験者の1組目は、メンターである川上結子さん(日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業本部 製造・流通 統括サービス事業部 エレクトロニクス・サービス事業部 理事)と、メンタリングを受ける側=メンティーである長谷川ひかりさんです。

川上:私は、東京大学工学部で機械工学を専攻していました。
長谷川:私は今、東京大学大学院の農学生命科学研究科で、細胞生化学研究室というところに所属しています。
川上:同じ大学の先輩後輩で、ともにリケジョだというところは一緒ですが、学部もちがうので、細かい研究の内容についてアドバイスしたというわけではないんです。ただ、理系の女性として、社会で活躍していくときに、こういう考え方してみたらどうだろう、といった話を重点的にしていました。

-- 長谷川さんがプログラムに参加したきっかけは?

長谷川:研究室の指導教官のところに、大学の事務局からプログラムの案内メールが回ってきたんですけど、女子が私だけだったので、当然のように「じゃあ、長谷川さんに」という感じで転送されてきて。
川上:まだまだ、理系の研究室には女性が少ないところが多いですよね。
長谷川:そうですね。リケジョ限定のプログラムということだったので、「ここでなら女子と話せるかも!」と思ったんです。女子と話すことに飢えていたというか……(笑)。やっぱり、男性と女性だと普段の会話にしても、興味の対象がちがっていて、男性はあまり「髪切ったね」というような日常会話にはのってきてくれませんよね。

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もうひと組は、田端真由美さん(同社グローバル・ビジネス・サービス事業本部 先進技術・自動化ソリューション統括部長 技術理事)とメンティーの佐藤真里さん。

佐藤:私は横浜国立大学の理工学部で化学を学んでいます。このプログラムに出会ったときは学部3年で、この先、就活するのがいいのか、院試を受けるべきか悩んでいました。それで、大学のキャリアサポートルームに足を運ぶようになり、貼ってあったポスターを見て応募したんです。
私の大学の場合、理工学部全体で見ると、女性の比率は2割ほど。ただ、化学科は女子が少し多くて3割くらいだと思います。虹色に変化するゲルなど、インスタ映えするというか、女子人気の高まりそうな、キレイな対象を扱ったりするからかなと思います。
田端:それでも、かなり増えたという印象ですね。私が横浜国立大学で電子情報工学を学んでいた頃は、女子は1割にも満たなかったと思います。当時は食堂なんかも暗くて、とても女子受けするような場所ではなかったんですが、最近、訪れてみたらおしゃれなカフェっぽくなっていて、驚きました。

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メンタリング・プログラムでは、最初に全体での交流会が行われるあとは、メンターとメンティーの2人が個別に連絡を取り合って、互いに都合のいい場所・時間に会い、気軽におしゃべりをする感覚でメンタリングを進めるのだとか。
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佐藤:私たちは、駅前のカフェで待ち合わせたりしていました。ケーキを食べたりして……。
長谷川:そうなの!?
田端:仕事の都合もあるので、時間もバラバラでしたね。朝会ったこともあるし。
川上:メンターにもほんとうに色々な人がいて、いろんなところにメンティーの学生さんを連れていくという人もいるんですけど、私たちはいつも18時から社内の会議室で(笑)。それで、毎回かなり長く話をしていましたね。

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……と、それぞれ自由な雰囲気の中、メンティーのみなさんはリケジョならではの悩みや不安をぶつけていったようです。

川上:長谷川さんの話を聞いてみると、とにかくいろいろ悩んでいる、ということでした。たとえば、社会人になるってどういうことなのかであったり、研究がうまくいかないといったことだったり。でも研究室では、身近な人はみな男性だということもあって、気軽に相談できる人がいない。研究の話はできても、何かうまくいかないと感じていると話しても、この部分をこうすればといった具体的すぎる話になってしまって、もっと根本的な考え方だとか、ものの見方といった深い話がしにくい、ということだったんですね。
長谷川:プログラムでは、そういうディープな話を、女性同士のおしゃべりというか、最近の関心事や世間話から入って、悩んでいることを徐々に、小出しに相談していくという感じでした。
川上:いろんな話をしましたが、とくに記憶に残っているのは、「社会人になる前の今と、社会人になってからは、結構ちがうよ」ということを、繰り返し伝えたことです。
研究生活では、専門的な内容に集中して、あえて狭い世界に入り込んでいくようなことが多くなります。けれども、仕事の場合はそれだけではなくて、得意なものをどんどん活かしていく。学生として研究室にいる間に、うまくいかないことがあって悩んでいても、それが社会人としての人生までも決めるわけではないんです。
学生でいる時間と、社会人になってからの年数を比較すると、社会人としての時間のほうが圧倒的に長いのだから、もう一回、人生を始めるようなものだよ、というようなことをお話ししました。
長谷川:学生としての今までの生活は、制約になるのではなくて、社会人になるときには結局「0歳」からのスタートだから、まだまだ長くて未知の可能性があるんだということを示していただいたんですね。ほんとうに深く悩んでしまっていたので、希望が持てて良かったと感じました。

佐藤:私の場合、やはり最初は「このプログラムに参加した動機は……」というようなお話をしていたんですけど、今一人暮らしをしているので、次第に田端さんが「横浜のお母さん」みたいになっていって(笑)。なんでも相談できる方という感じになっていきました。
「女性が働くって、実際、大変じゃないですか?」とうかがったり。私の場合、身近な女性といえば母だったんですけど、母は専業主婦で、「働く女性」と言われてもイメージできるのは、ドラマの中で見るような存在だったので、ぜひそういう人に会ってみたいなと思っていたこともありました。今はやりのワークライフバランスについても聞かせていただいたりとか。
田端:佐藤さんの場合、かなり真面目に、細かく将来のことを心配していたんですね。でも、そんなに人生設計を考えても、将来のことをすべて予測できるわけではないし、その場その場で柔軟に視点を変えていけばいい話だよとか、おしゃべりの延長で伝えていった形です。
たまたま、生い立ちが似ているようなところや、彼女はピアノをやっていて、私はエレクトーンをやっていたりと、音楽という共通の趣味があったことなどでも盛り上がって、気軽に話してもらえたんじゃないかなと思います。

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それぞれのメンターとメンティーのペアによって、話の切り口やメンタリングのスタイルは、まったくちがうようです。けれども、学生のお二人に共通していたのは、プログラムを通じて、ひとりで抱え込んで、膨らませてしまっていた将来への不安について、まったくちがう見方を提案されていたこと。普段は身近にはいない「社会で活躍するリケジョの先輩」に悩みをぶつけることで、肩肘張らず、自然体で将来に向かっていいんだということを感じ取ったようです。

AI性格診断でわかった「苦手ばかり見てしまう」クセ

メンタリング・プログラムでは、人工知能IBM Watsonが、その人が書いた文章を通じて性格を診断する「Personality Insights」(PI)も活用されていました。

佐藤:メンタリングが始まる前、最初にPIを受けました。PIが教えてくれる性格の要素には、「協調性」とか色々な項目があるんですけれども、私は「注意力」の点数がすごく低かったんです(笑)。あとから思うと、私は結果を見たときに、点数の低いところばかり見ていたんです。
高校までの勉強だと、「ああ、君は社会ができないから、得意な英語はおいておいて、ひとまず社会の勉強をしようか」と言われたりしますよね。そのクセが染み付いていて、自分のポイントの低いところばかりを見てしまっていたんです。「私は協調性と謙虚さが足りないんだな」とか。高得点だったところには目が向かなかったんですね。
実は、そういう考え方を変えてくれたのは、プログラムの最後に長谷川さんが発表したことだったんです。ファイナル・プレゼンテーションで、「マイナスなところだけ見るんじゃなくて、自分のいいところを見ていこう」という話をされていて、発表の中でいちばん印象に残っていました。そうしたら今日、(取材の現場で)お会いすることになって(笑)。
長谷川:そうだったんだ(笑)。
川上:長谷川さんと話していて感じたのは、もう彼女が話している間中、ずっと悩んでいるということだったんですね。質問も「私、これができないんです、これが苦手なんですけど、どうしたらいいですか?」というものが多くて、なんでそんなに苦手にこだわるのかなと思ったんです。「すべてが得意です、なんていう人はいないんだから、苦手なものがあってもいいじゃない」ということを繰り返し伝えていました。
でもあるとき私も、さっき佐藤さんがおっしゃったようなことに気がついたんです。PIの結果にしても、自分の苦手なものを見ているんだなと。そこばかりに赤丸をつけて、「これをなんとかしなきゃ、ここを100点にしないと卒業できない」みたいな感覚にとらわれているんじゃないかということに途中で気がついたんですね。
それである日、「もしかして、苦手なものをみんななくして、全部得意にしようとしているの?」と聞いたんです。
長谷川さん:私は、「いや、別にそんなこともないけど、言われてみればそうかもしれないです」って(笑)。

川上:そこから、ブレイクスルーしたんです。社会に入ると、苦手なことはほとんどどうでもよくて、得意なことを使っていかなければならないのに、苦手をなくそうとすることに力を使うのは非効率だしもったいない。だから、得意なものを伸ばしていきましょうと。
でもそしたら、「じゃあ、得意なものってなんでしょう……」って(笑)。
だから、あまりにも高校までの教育で「社会が点数足りないから頑張りましょう」「偏差値がこれこれ以下だから頑張りましょう」と言われるから、みんな得意なものに目を向けるという習慣がないんです。
長谷川:それで、「得意なもの探し」をしたんですけど、結構難しかったですね。なので、最後のプレゼンでも、私は得意なものを探していかないといけないなと思いました、ということを話したんです。
田端:すごく素敵なプレゼンで、みんな「なるほど」とうなずいていました。
川上:私もプログラムを通じて、理解を深めることができました。学生だけじゃなく、会社員になってからも、社内で女性社員がずっと悩んでいるといったケースはあるんですね。私の目から見ると、その人は何も悪いところはないのに、「私はあれができない、これができない」と悩んでいる。これは、どういうことなんだろう? と長年、感じていたんですが、「そういうことだったのか」と腑に落ちたんです。
長谷川:私自身の研究でも、あまりうまくいっていない部分があって、ゼミで進捗報告などをしたときに、先生や先輩から「そこは、なぜこういう風に考えてみなかったの?」とツッコミを受けるんですね。そういうときに私は、「ああ、自分はなぜ言われる前にそれに気がつかなかったんだろう」と劣等感を感じるばかりで、ダメだダメだと思っていたんです。
でも、川上さんに「なんで、そのできなかったことを、そんなに気にしているの」と言っていただいて、そんな必要なかったんだなと、ほんと、人生が華やかになったというか、色を取り戻しましたね(笑)。

PIの点数は「ダメか、ダメじゃないか」ではない

Personality Insightsのデモ結果。協調性や感情の起伏など、様々な項目が分析される。

田端:そもそも、PIの点数というのは、低いから悪いわけではないんですね。指標は真ん中にあって、どちらに寄っているか、ということなんです。それでも、「点数が低いから苦手なんだ、これをどうにかしなきゃ」とみんなが思ってしまうとすると、それはうちのシステムの見せ方が悪いのかもしれない(笑)。
川上:でも、やっぱり教育の影響は大きいと思いますよ。長谷川さんとも話していたんですが、やっぱりそれは、ゴールが100点だという前提で勉強しているからじゃないかなと思いますね。つまり、100点を150点に伸ばすことは、試験ではできないでしょう。だから、得意なことに労力をかけるよりは、苦手なことに目を向けさせる。80点を100点にしたら20点伸びるけど、すでに90点の教科を頑張っても10点しか伸びない、という風に考えてしまう。
それは、「点数を伸ばす」というためには正しい選択かもしれないけれど、社会人になったら、点数なんかつかないんですよね。
田端:点数が重要視されるのが、受験のためだとすると、実は大学に入ったときには、点数で語れる世界は終わっているはずなんです。だけど、誰も「ここからは人生切り替わるので、ご注意ください」とは言ってくれない。そういう機会がないですね。
川上:自然と切り替わる人もいるけど、社会人になっても変わっていない人もいて、ずっと悩んでいたりするんです。
田端:会社でも人事上の「評価」というものはあります。でもそれは、点数ではかるようなものではないんですね。ただ、実際に「僕はあと、何をやったら上がれますか(昇進できますか)」と問いかけてくる若手はいたりします。そういう人の話を聞いていると、何かこう、ゲームの攻略本みたいなものを求めているんじゃないかなと感じることもありますね。つまり、どこかに正解があって、とにかくそれをこなしさえすれば、上がれるんじゃないかと思っている。
でも、私たちに「答え」はないんです。上司は、何か「答え」を知っていて働いているわけじゃないんですね。状況は常に変わっていて、現状、取り得る選択肢の中で何がベストか、という判断しか現実社会ではないはずなんです。なので、それがベストだということを上司との間で合意できれば、それで回っていくはずですよね。でも、何か絶対的な「正解」があるんじゃないかと考えているような人は、やはり少なからずいると思います。
佐藤:さっき田端さんが言ってくださったように、私が人生設計について、とても具体的なことまで将来のことを考えすぎて悩んでいたのも、「正解」を求めたがる気持ちに似ていたかもしれません。
私は、せっかく理系に進んだなら理系の仕事をしたい、とくに専門の化学業界で働くんだろうなと思い込んで、その業界ばかり見ていたんですね。でも、そうなったら地方の工場勤務になる可能性が高いのかな、そしたら子供を持って転勤とか、どうしたらいいんだろう……と先回りして悩んでしまって。
でも、もっと働き方というのは多様だし、いろんな選択肢があるんじゃないの、ということを今回のプログラムを通じて示してもらいました。たとえば、理系と呼ばれる職業でなくとも、理系的な発想が活かせる仕事というのはあるんだとか。化学系のテンプレのような人生しか思い描いていなかったので、本当に視野を広げていただいたと思います。

リケジョの未来は、理系だけじゃない

長谷川:このプログラムに参加したときは、「これは理系女性の人材育成なんだから、きっと理系を極めたリーダーになれるように頑張らなきゃいけないんだろうな」と思っていたんです。でも、佐藤さんがおっしゃったように、理系ということに初めからこだわっていなくとも、自然と理系的な思考というものは社会で求められているし、活躍の場もたくさんあるんだということに気づかされました。
むしろ、まったく新しい視点を与えてもらって、気づきがあるということが、いちばんの収穫だったんじゃないかなと感じます。
佐藤:私も最初は、理系女性のリーダーと語るプログラムと聞いて、「研究所長になるには」みたいな話なのかと思っていた部分もあったんですけど(笑)、全然そんなことはなくって。
田端:リーダーというのは、社会でイニシアチブを発揮できる人、というくらいの意味なんだけれど(笑)。
川上:学生のみなさんが、そこで「研究所長」って思っちゃうところが、やっぱりまだ社会人の感覚とギャップがあるところなのかもしれませんね。

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大学を経て、研究を続ける選択をしても、一般企業で働く選択をしても、「社会人になる」ことには変わりはありません。でも、いつから「学生」のマインドセットを切り替えたらいいのかは、誰も教えてくれないんですね。

日本IBMのメンタリング・プログラムは、ひとりひとりの悩みに向き合いながら、メンティーの学生だけでなくメンターのみなさんにも発見がある、実り多い時間だったようです。

その考えるきっかけを与えてくれるのが、人工知能IBM Watsonが弾き出す、「あなたの性格の傾向」。その点数を見たとき、ダメなところばかりに注目してしまったとしたら、あなたの思考も点数中心の教育に縛られてしまっているのかも? 同じIBM Watsonを利用したRikejo AI性格診断のコーナーにも、ぜひ挑戦してみてください!