先日、リケラボ編集部がサイエンスに関する情報収集をしていると、こんな情報を見つけました。

「GSアライアンスが 植物、木、竹、廃木材、紙ごみ、食品ごみなどから効率的にバイオエタノールを抽出する方法を自社で開発。バイオエタノールや木、竹のお酒の生産を目指す」

次世代燃料のひとつとして注目されている「バイオエタノール」。トウモロコシやサトウキビが活用されているということはよく聞きますが、どうやら今回はほかの資源に着目したようです。

とくに日本人にとって「竹」は身近な植物。成長が早いからこそ、荒れ放題になっている竹林の問題なども話題になることもあります。これらの資源をエネルギーとして活用できれば、環境、エネルギー、食糧、資源……などなど、多方面にメリットがありそうです。「竹のお酒」というのも、ユニークで気になる……。

ちなみに、こちらの技術を確立したGSアライアンス株式会社は、以前に紹介した「ペロブスカイト型量子ドットの生産方法」を確立した冨士色素のグループ企業でした。偶然のつながり!

そこで、今回確立されたバイオエタノール生成技術の開発背景や、「竹」という資源の可能性についてお話を聞いてみました。

答えてくださったのは、GSアライアンス株式会社の代表取締役社長(冨士色素株式会社の代表取締役社長も兼任)で工学博士の、森良平さんです!

食糧以外の資源でバイオエタノールを生成したい


──バイオエタノールを植物、木、竹、廃木材、紙ごみ、食品ごみなどから抽出することの利点を教えてください。

近年、気温の上昇や異常高温、熱波、大雨や早い春の訪れによる生物活動の変化、水資源や農作物への影響など、地球温暖化の影響がすでに人間社会に現れてきています。地球温暖化の原因は、メタンや二酸化炭素など、温暖化ガスの急増です。そのため現在、二酸化炭素を排出する石油などの化石燃料に変わるエネルギーの発見・開発が急速に進められています。

そして、新しいエネルギーとして有力な候補とされているのが、バイオエタノールです。現在、バイオエタノールはトウモロコシやサトウキビなどの農作物から生産されています。しかし、これらは私たち人間にとっての食糧でもあります。今後地球上の人口がさらに増え、食料危機が心配されている中、ベストな材料とは言えません(一般的に食料競合と言われています)。

そこで理想的なのは、食糧以外の植物、木、廃木材、紙ごみ、食品ごみなどから生産できるようになることです。これらのバイオマス資源、特に木材などの植物は、主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されていています。なかでもバイオエタノールの資源として利用しやすいのはセルロースです。セルロースは、バイオエタノールの素になるグルコースの高分子です。

しかしセルロースをグルコースに分解するには、通常は特殊なプロセスを用いる必要があり、困難でした。

──セルロースをグルコースへ分解することが困難だったのはどうしてだったのでしょう?

通常、セルロースは、硫酸などを用いて激しい化学反応を起こすことで分解し、グルコースに変化させます。ただこの過程には、化学反応で残った硫酸などを中和する必要があり、さまざまな工程を必要とする従来の方法では、どうしてもコストと手間がかさんでしまうというデメリットがありました。

また、セルロースを分解する有機溶剤、酵素などがあまりなく、材料が高価というのも、コスト増の要因のひとつです。

今回我々が開発したのは、このセルロースをグルコースに分解するための効率的な手法です。高価な材料をできるだけ使わずに、新たな工程で効率よくセルロースを分解する手法を発見しました。

開発するのには時間がかかりましたが、結果として、竹などの木材から高効率にバイオエタノールを作れるようになりました。

△竹から抽出したバイオエタノール

日本で余っている「竹」に着目

──今回、資源のなかでも「竹」に着目したのはなぜですか?

我々は国内の大学などの研究機関とも一部協業させてもらったりしていています。あるとき、会社の所在地と同じ兵庫県内の大学の先生と打ち合わせをした際、「淡路島の竹を使って何かできないか」とサンプルをいただきました。それで、「同じ兵庫県内の資源を使ってみるのもいいかもしれない」と、まずはその竹を木材がわりとして使ってみたのがきっかけです。

竹は非常に成長が早い植物で、兵庫県に限らず、日本全国で大量に余っているといった実情も耳にしていたので、これを資源として使用できれば最適だと考えました。

──GSアライアンスは「冨士色素グループ」の一員として生まれた会社ですが、どうして「色素」から「環境・エネルギー分野」に展開することになったのですか?

私自身、環境・エネルギー分野の研究開発に非常に興味を持っていたからです。また近年、プラスチックを含めたゴミ問題、温暖化、水不足、食糧不足など、実際に地球環境が劣悪になってきているため、何か対策をしていかなければならない、と思っているのも大きな理由です。

従業員100人弱の中小企業である冨士色素を今後も長期間にわたって維持していくために、従来の色材の事業のほかにもうひとつ大きな柱を持っておきたい、という考えもあって、GSアライアンスを立ち上げました。

──今回の技術をもとにした事業展望を教えてください!

木材など非可食性のバイオマス資源からエタノールを作る技術自体は昔からあったようですが、やはりトウモロコシやサトウキビを原料とするよりもコストが高くなるため、石油に代わる資源とするにはまだまだ簡単にいかないこともあります。

ですが、今回確立した方法は地球環境にも優しい技術なので、今後さらに効率的に、工業的レベルでバイオエタノールを作れるようにしていきたいと考えています。

また、ユニークな活用法として「木材からのお酒」を造り、世界初の事業化も狙っていきたいです。今回の技術は、竹以外にも基本的にはすべての植物に応用できるため、さまざまな素材を用いたお酒造りを考えていて、海外にも展開していければと考えているところです。お酒造りを事業化することで、セルロース由来のエネルギー開発にさらに注力できるようにしていきたいと期待しています。


竹は日本人にとって身近な植物ですが、「竹林が荒れ放題になっている」などの竹害問題も耳にします。これをエネルギーとして活用できれば、まさに理想的!

「木材のお酒」造りもとてもユニークです。今後の発展が楽しみですね!
 
〈取材協力〉
GSアライアンス株式会社 https://www.gsalliance.co.jp/

〈プレスリリース〉GSアライアンスが植物、木、竹、廃木材、紙ごみ、食品ごみなどから効率的にバイオエタノールを抽出する方法を自社で開発  バイオエタノールや木、竹のお酒の生産を目指す


 

【参考】バイオエタノールとは?

・バイオエタノールは、農作物、木材・古紙などの植物の多糖から作られる液体アルコール(C2H5OH)で、主に輸送用(ガソリンに代わるもの)として利用されている。ガソリンに混ぜて使うことで、ガソリンの使用量を減らすことができる(混合ガソリン)。

・バイオエタノールの原料は現在は主に、トウモロコシやサツマイモ、ムギ、タピオカなどのデンプン質原料と、サトウキビやテンサイなど。これらの植物に含まれる糖分を微生物によって発酵させ、蒸留してエタノールを作る。

・食料競合の問題を避けるため、セルロース系原料を利用するエタノールの開発が進められるようになった(これを次世代バイオエタノールと呼ぶ。第二世代バイオエタノールと呼ばれることもある)。
まだ実用化には至っていないが、アメリカでは2022年までに60億ガロンをセルロース由来のバイオエタノールに変換することを目標としている。

・日本でも、バイオエタノールの導入目標が設定されているが、国土がトウモロコシなどの大量生産に適さないこともあり、海外からの輸入に依存している。そのため、セルロース由来の次世代バイオエタノールの早期実用化が期待されている。

参考資料:
https://newswitch.jp/p/13114
http://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=6″


 

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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