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Q:現在のお仕事について詳しく教えて下さい。

私の所属する部署では航空機やロケットのエンジンを生産・開発しており、私は旅客機のエンジンの設計を担当しています。私は今、世界3大飛行機用エンジンメーカーのひとつ、ゼネラル・エレクトリック社(GE)の4機種のエンジンを担当しているのですが、ジェットエンジンは圧縮機、燃焼室、タービンから構成されていて、圧縮機の翼部品を担当しています。この翼部品が軽く、性能がよくなれば、燃費が向上し、お客様の運賃が安くなることにつながっています。
 
また現状よりもつくりやすい形、整備のしやすい形にするためにはどうすればいいのかという観点からも、部品の形状や素材などを日々検討しています。
 
 
 

Q:現在の仕事のやりがいと大変なところは何ですか?

航空機は何かトラブルがあった場合は致命的なアクシデントにつながるケースもありますので、クリアしなければならないハードルの数がすごく多いです。また近年は燃費をよくするために部品を軽量化したいという要求も強く、技術的なハードルの高さも上がっています。さらにコストを抑えることも大事になります。そんな中で品質とコストをうまく両立させた部品をつくれたときは達成感があります。またIHIの中には技術開発本部という基盤技術を研究する部署があり、そこがつくった新しい技術を生かして、エンジンとして世の中に送り出せたときは、すごくやりがいを感じます
 

IHI

 
 
 

Q:学生時代に勉強したことが役立っていることはありますか?

実はあまりありません(笑)。今、あらためて学生時代を振り返ってみると、当時の勉強の仕方が悪かったのかなと感じています。学生時代は目の前のテストのための勉強ばかりしていて、数学や物理でもとりあえず公式や解法のパターンを覚えてしまえれば何とか乗り切れるだろうと思っていました。でも、そういう勉強では、社会に出たあとに通用しません。
 
例えば物理の公式ひとつにしても、「なぜこういう式になるのか?」という理由をもっと突き詰めればよかったと反省しています。そうすれば理解がもっと深まり、応用もできるようになっていきます。社会に出ると、あの時に使った知識と、この時に使った知識をうまく組み合わせて次のことをやるというケースがよくあります。そのためには「何でこうなっているんだろう」という根本を理解していないと、応用はできません。
 
現役の高校生の方には、テストの勉強だけでなく、「何でこうなるのか」という理由をもっと突き詰めて考えたほうがいいのかなと思っています。
 
 
 

Q:子どものころから「航空宇宙のエンジニアになる」というのが夢だったと聞きましたが、あきらめそうになったことはなかったですか?

あきらめようと思ったことはないです。でも夢は実現しましたが、自分の力がまだ足りないこともあり、日々、勉強することも多いです。仕事では楽しいことばかりでなく、49%と51%という割合で、常に苦しいと楽しいという感情がぶつかり合っているという感じです。
 
学生時代、私の周りでは「好きな仕事があったけど、自分に向かないのであきらめちゃった」という話をよく聞きました。大学生の方は、まず自分の特性を判断して、「私はこれが得意だから、あるいは苦手だからこんな仕事をしよう」という形で就職先を決めるケースが多いように感じます。
でも得意不得意は関係なく、好きだからこそできる仕事もあると思っています。私は学生時代から数学や物理が苦手で、すごく苦労してきました。今でも苦労することがあり、正直、「私は理系に向かないかもしれない……」と思ったことが何度もありました。
 
でも好きだからこそ、苦手なことを克服するために頑張ることができたとも感じています。「あきらめずにやり続ければ必ずいいことがあるよ!」と思いながら、私は仕事に取り組んでいます。
 

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(取材・文=川原田剛 写真=井上孝明)