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Q:現在のお仕事を教えてください。

自動車を静かにするための防音材の開発をしています。
 
防音材の材料は何だと思いますか? 実は、古着のリサイクル材です。私の会社では自治体と協力して古着を集めています。防音には綿が一番効果的だと言われており、その中から綿が多いものを選びだします。それを細かく砕く“解繊”という作業を何度か繰り返すと、ふわふわに柔らかくなるんです。それに糊をつけて固くして、最終的に部品として成型していくのですが、私の仕事はふわふわの繊維と何を糊付けすればいいのか、という原料配合を考えて、新しい材料をつくることです。
 
糊の種類によって、性能は大きく変わってきます。例えば、エンジン周りは熱くなりますので、室内向けの糊を使うと溶けてボロボロになってしまいます。
 
防音材と一口に言っても、使われる場所によって求められる性能は異なっていますので、それぞれの場所に適した材料は何かと探すのが私の仕事です
 
 

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普段は文献を読んだり、素材メーカーさんに『こういう材料がほしい』と言って購入した繊維を使って自分で手を動かしながら『これはよかった。あれはよくなかった』と試行錯誤しながら開発をしています。
 
防音材には軽さも重要になります。軽ければそれだけ燃費もよくなりますので、環境にも優しいですよね。
 
静かで、軽くて、環境に優しい商品をつくるのが私の使命です。
 
最近は自動車メーカーさんの作業服を回収してそれを防音部品にして、またメーカーさんに買ってもらったりしています。まさに完全なるリサイクルが実現できています。(笑)
 
 
 

Q:高校時代はどんなことに夢中になっていましたか?

部活動に明け暮れていました。
 
管弦楽部でオーケストラのコントラバスを担当しており、下手したら週に7日間学校に行っていました。私の学校の管弦楽部は上下関係が厳しくて、体育会のように厳しい練習をしていました(笑)。
 
高校3年で部活を引退する前までは、進路のことは何も考えていませんでした。勉強も定期テストの前に一生懸命やったぐらい。部活は朝練もあって、夜も結構遅くまでやっていたので、授業中は『眠いなあ』といつも思っていました(笑)。それに付属高校だったので、周りは内部進学する人が多く、先生に『進路を早く決めなさい』と言われることもないんです。
 
私も一時そのまま上にあがることを考えたのですが、生物が好きで、『なんで動物や生物は生きているだろう?』ということに興味を持っていました。分子生物学というか、生命現象をDNAレベルで研究することをやってみたかったのです。
 
それでいろいろ調べていると、東京農業大学は農業だけでなく、薬品、食品、動物の生態などの幅広い研究をやっていることがわかり、『面白そうだな。東京農大に進学できるように頑張ろう』と思い、3年になってから集中して受験勉強を始めました。
 
 
 

Q:大学で学んだことが、今のお仕事にどのように活かされていますか?

私の学部には“発生”と“記憶”の研究室もあったのですが、発生のほうに興味をひかれ、発生の研究室に入りました
 
今の仕事とはまったく畑違いの研究でしたが、東京農大は実学主義で、『実際に大学で学んだことは身になるんだよ』と教えてもらいました。その教えは、今の仕事にすごく役立っています。
 
大学では、学んだ知識をどう応用して自分が目指しているところに近づけるのか、というコツを教えてもらったと思います。例えば、発生に関して全然知らないことをテーマに与えられたとしても、まったく違う物理の知識やアイデアを引っ張ってくるとわかることもあります。
 
知識と視野を広げて考え、トライ&エラーを繰り返しながらでも自分なりに結論を見つけていくという方法論は、今の仕事にすごく役立っています。
 
 

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“静かで、軽くて、環境に優しい商品をつくるのが私の使命”と話す新岡さん

 
 
( icon-pencil =川原田剛  icon-camera =井上孝明)