鎧をまとって身を守るのは、江戸時代の侍たちだけだと思っていませんか?
なんと現代にも、“鎧”をまとう生物がいます。
場所は水深2500mの深海。
硫化鉄の鎧をまとう巻貝「スケーリーフット」です。
世界初の生き物!
ことの発端は2001年。アメリカの研究チームが、インド洋の深海で見つけました。体の一部が硫化鉄でできた生物の発見は世界初!今だに多くの謎に包まれています。
正式名は「ウロコフネタマガイ」。「うろこのある足」を意味するスケーリーフットの愛称で、深海ファンの注目を浴びています。殻も足についたうろこも、硫化鉄で覆われて、金属のように黒く輝きを放ちます。殻と足の間からは、赤い触覚がちょろん。上の写真は大きいので、化け物のように見えますが(笑)、大きさは4cmほどで、手のひらにちょこんと乗るほどの大きさです。エビやカニに襲われたときに、鉄のうろこを閉じて、身を守ります。
深海ってどんな場所?生物はいるの?
そもそもみなさん、深海がどんな場所だか想像できますか?太陽の光が届かない、暗闇の世界。水温が4℃以下の冷たい世界。発泡スチロールがぺしゃんこに潰れてしまうほどの、高い水圧の世界。35年ほど前まで、そんな過酷な環境に生物がいるとは考えられていませんでした。しかし、生物はいました。しかも、驚くほどたくさんの生物が。鍵を握るのは、マグマで温められた海水が噴き出る「熱水噴出孔」です。
人間にとっての“毒”を栄養に
「ゴゴゴゴ、ゴゴゴゴ・・・」
腹の底に響くような重低音を響かせ、灰色の熱水が立ち昇る。
熱水噴出孔から吹き出る熱水の温度は、なんと350℃以上!周りの冷たい海水と混ざり、ほんのり温かい環境になっています。熱水は、人間にとって毒である硫化水素を含んでいます。しかし、深海の生物たちはこの硫化水素を、栄養源にしていたのです!スケーリーフットも、硫化水素を栄養にする微生物を消化管の中に住まわせ、栄養を得ています。
スケーリーフットが来日
そんなスケーリーフットに、日本の研究者も注目しています。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は3月、有人潜水調査船「しんかい6500」でスケーリーフットを採取し、生きたまま日本に持ち帰ることに成功しました!その研究チームには、女性研究者も活躍しています。今後は「どうやって硫化鉄の鎧ができたのか」を明らかにする研究が、期待されています。
生き物が大好きなRikejoの人たちは、多いのではないでしょうか?好きなことを突き詰める人は、輝いて見えます。海の生物に人生を捧げるのも、悪くないかもしれません。(福田大展)
次のお便りは「大学学食シリーズVol.1 大阪大学」