レポートまでの道のり
Rikejoレポーターの二人はイベントで実際にレポートをする前に、レポートレッスンを受け、レポートの基本を学びました。今回はイベント後に実際に大学の先生に取材をするため、取材をする際のポイントなどをレッスンで身に付けてイベントに臨みました。レッスンをきちんと受けていたため、二人のレポーターの取材は完璧でしたヨ!
NANO-JASMINEとは?
質量35kg、1辺50cm ほどの立方体の超小型位置天文観測衛星のこと。2011年度(8月以降)にブラジルで打ち上げ予定。国立天文台、東京大学、京都大学などが開発。
サイエンスカフェ「宇宙の謎への挑戦」では、2人の先生が講演しました。
3月5日に東京大学工学部で開催されたサイエンスカフェ「宇宙の謎への挑戦」では、NANO-JASMINEプロジェクトを指揮する国立天文台の郷田直輝先生と東京大学工学部の中須賀真一先生が講演しました。郷田先生は「最新の宇宙像と天の川銀河探査」、中須賀先生は「宇宙に挑む工学−超小型衛星による新しい宇宙開発と宇宙の謎探査−」というタイトルで、会場に集まった小学生や中学生、高校生に対して、熱心に宇宙の魅力を語りました。会場からは時折、宇宙物理や宇宙工学の奥深さに感動した驚きのどよめきや、先生のジョークに対する笑いが起こり、終始和やかなムードでした。レポーターの二人も講演を聞き、イベントを存分に楽しんでいましたヨ!
「最新の宇宙像と天の川銀河探査」
「あの星は何?」と子どもの頃に親に聞いたことがある人は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。私も子どもの頃に美しい星に魅了され、現在は宇宙の研究をしています。
ところで、自然界には階層があります。階層というのは、大きさの違いにより世界が異なることを表しています。たとえば、原子の世界と私たち人間の世界とでは、見えてくる世界が異なりますよね。顕微鏡で見る世界と私たち人間の目で見る世界が異なるということです。そのため、自然界にはさまざまな世界があり、それは層を成すと考えるわけです。宇宙にも階層があり、たとえば太陽系、星団、矮小銀河、銀河、銀河群、銀河団、宇宙の大構造といった別の階層にあるそれぞれの構造があります。私はこのうちの銀河に注目し、NANO-JASMINEで我々の地球が住んでいる天の川銀河の観測をしたいと考えました。天の川銀河は、端から端までがおよそ10万光年あり、太陽系から天の川銀河の中心まではおよそ2万7千光年あると分かっています。天の川銀河の中心には、ブラックホールがあると言われており、その謎の解明が待ち望まれています。私はNANO-JASMINEで地球から太陽系近傍、さらにそれに続く予定の小型や中型のJASMINE衛星で3万光年までにある天の川銀河の星の位置を観測し、星はどこで誕生したのか、銀河がどのように形成されたのか、といったことを明らかにしたいと考えています。
「宇宙に挑む工学-超小型衛星による新しい宇宙開発と宇宙の謎探査- 」
携帯もパソコンも何もかも小型化の時代。大型化していた衛星も小型化できないか?と考えたのが、超小型衛星の開発の始まりです。大きくなり過ぎた衛星には問題があり、1機を開発するのに数百億円の莫大なコストがかかったり、開発期間が5〜10年もかかったりといったことがあります。また、コストがかかるために、失敗を許さない空気が開発現場に流れ、そのためにとても保守的な設計をすることになり、新しい技術的なチャレンジができなくなっていました。また、開発しても値段が高いために顧客はほとんどが国家。民間企業が買うことはできず、そのために宇宙利用は広がりませんでした。このような状況から、宇宙開発の技術革新のスピードは非常に遅く、衛星を利用したビジネスもほとんどありませんでした。私はまず1999年に、研究室の学生とジュースの空き缶を利用して、超小型衛星を開発しました。「CanSat」という衛星です。その後、1辺10cmの立方体の形をした約1kgの「CubeSat」を打ち上げ、地球の画像を撮影・送信に成功しました。今回は、天の川銀河にある星の位置を観測するために、NANO-JASMINEを開発しました。わずか1億円程度で開発されたNANO-JASMINEは、500億円かけて開発され、89年に打ち上げられて4年程度位置観測をしたヒッパルコス衛星と同等の性能があります。ブラジルでの打ち上げを楽しみにしています。
Rikejoレポーターの9つのレポート
NANO-JASMINEは
どうやって生まれたの?
中須賀先生との出会いがNANO-JASMINEを生みました。私は、人類はどこから来たのか、宇宙はどのように誕生し、形成されたのかを知るため、まずは天の川銀河の星を観測したいと思っていました。最初は大きな望遠鏡で観測しようと考えていましたが、莫大な費用がかかるために困難。そのため、悩んでいました。しかし、そんな時に行われた研究会で中須賀先生の350ml缶サイズの人工衛星CANSATを知りました。「そうだ、超小型衛星で天の川の観測をすればいいじゃないか!」と思いつき、中須賀先生に掛け合い、衛星の開発をお願いしました。二人の理学と工学という違う分野の人間が手を繋いで、NANO-JASMINEは生まれたんですよ。(郷田)
中須賀先生は、どうして
超小型衛星を開発していたの?
私は大学教授なので、大学生を教育するのが仕事のひとつです。そのため、教育目的で、超小型衛星を開発することにしました。工学は、「現場」が大切。実際に衛星を開発する喜びをみんなに感じてもらえればと考えた結果でした。どうして教育のためには超小型が良いのかと言うと、研究開発に費用があまりかからないのと、大学の研究室のような小さな部屋で作ることができるからです。大型の衛星になると、莫大な費用と大きな施設が必要になります。研究室の研究費と研究室のメンバーで開発するのが難しくなります。(中須賀)
どうして可視光線ではなくて、
赤外線で観測をするの?
銀河にある星は、目に見える可視光線と赤外線を放っています。光にはいろいろな種類があり、その波長によって可視光線だったり、赤外線だったりします。ところで赤外線は、銀河に広がるガスや塵を通り抜けてしまう性質があります。一方で、可視光線は通り抜けません。そのため、可視光線で観測してもガスや塵に遮られている天の川銀河の中心や星が生まれている領域などの星を観測できませんが、赤外線で観測すれば、それらの星の位置や運動が精度良く分かります。そのため、赤外線で観測をするのです。(郷田)
観測の任務が終わったら、
NANO-JASMINEはどうなるの?
宇宙を漂い続けて、宇宙ゴミになるわけではありません。観測の任務が終わったら、しばらくは宇宙空間を軌道に沿って動き続けますが、早ければ10数年後に、遅ければ100年ほど後に、地球の中心に向かって落ちてきます。地球の中心に落ちてくるのは、空気摩擦があるためです。高度600km〜800kmほどの軌道をNANO-JASMINEは周りますが、この高さにはわずかに空気があるんです。そのため、空気摩擦を受けて、軌道を保つことができなくなって落下してきます。そして大気圏に突入すると燃え尽きるため、NANO-JASMINEは消えてなくなってしまいます。(中須賀)
NANO-JASMINEに関わる
お二人の今後の夢は何ですか?
天の川銀河の中心には、すべてを吸い込んでしまうブラックホールがあります。それがどのようにしてできたのか、そして最終的には、宇宙はどのようにしてできたのかということや人類がどのようにして生まれたのかということを知るのが夢です。(郷田)
現在までの大型の衛星開発とは異なる、未来型の新しい超小型衛星開発の世界を作りたいと考えています。お金をかけずに早く手軽にできる、そういう開発の世界を作りたいんです。2600億円ほどかけている開発費を200 億円にまで押さえ、現在よりももっといい世界を作りたいと思っています。(中須賀)
天の川銀河について
何が分かっていて、これから
何を調べようとしているの?
既に分かっていることは、天の川銀河が大体どのくらいの大きさなのか、どういう形をしているのか、その中にはどれだけ星があるのかということです。暗い星は観測できませんが、約2000 億個の星があることが分かっています。NANO-JASMINEが調べようとしているのは、地球から300光年までの天の川銀河系の星の位置と運動。20年前にヒッパルコス衛星が同じ星を観測しているので、そのデータと比較することで、星の運動がヒッパルコス衛星より精度良く分かります。星の運動が分かれば、星がどこで生まれたのか、銀河がどのように形成されたのかが分かります。(郷田)
NANO-JASMINEは
何年間、観測をし続けるの?
2年間、観測する予定です。2年間でNANO-JASMINEプロジェクトの目的を遂げることができるからです。天の川銀河には約2000億個の星があることが分かっていますが、このうちの地球から300光年までにある20万個の星の位置を把握するのが、観測の目的です。ヒッパルコス衛星は、同じく地球から300光年までの星のうち、12万個の星の位置を観測していましたが、これには4年程度かかりました。2年間できちんと観測できるように、「2年間は絶対に壊れないように!」と開発チームは様々なことに注意して、頑張っているんですよ。(郷田)
なぜNANO-JASMINEを
ブラジルで打ち上げるの?
最近新しくできたブラジルとウクライナのロケット打ち上げ会社であるアルカンタラ・サイクロン・スペース社から、「うちで打ち上げない?一般的な値段の20分の1の値段でオマケしておくよ」という話しをもらいました。それは、打ち上げ第一号のロケットにNANO-JASMINEを相乗りさせるというものでした。最初のフライトなので、テストフライトの扱いとなり、費用は安いのです。私たちはもちろん、OKしました。その打ち上げ場所がブラジルだったため、ブラジルで打ち上げることになっています。(中須賀)
NANO-JASMINEの開発で、
何か苦労したことはありましたか?
苦労はやはり、ありました。観測する時に磁気の影響を受けずに同じ姿勢を保つこと、宇宙空間に出て急激に温度が低下する時に、その影響を衛星の内部装置が受けないようにすることなどが大きな課題でした。同じ姿勢が保てないと観測データがブレてしまいますし、内部装置が動かなくなってしまうと、観測できなくなってしまいますからね。しかし、根性で乗り越えました。とても答えが見出せないような状況があっても、諦めずに答えを求めて考え続けることが重要です。1ヶ月くらいずっと真剣に考えれば答えは必ず、見つかるんです。答えは必ずある、それが工学だと信じています。(中須賀)
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