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Q:現在の仕事について教えて下さい。

 
国際協力機構(JICA)のカンボジア事務所で働いています。私が具体的に担当するのは、インフラを通した国づくり。この国がより豊かに、幸せになるためには、どのようなインフラがどこに必要なのか。そのために必要なお金や技術はどのように準備するか。カンボジア政府の思いを引き出し、日本がどんな支援ができるのかを考え、他の国と協力・調整しながら、そのインフラづくりの実現に向けた資金調達や技術調達を組み立てていくのが主な仕事です。
 
例えば、カンボジアにはお米や果物などの農作物、鶏肉や豚肉などの畜産物、手先の器用な人たちがつくる織物や衣類があります。これらがお金に変わるためには、つくった人のもとを離れて、国内外で必要としている人に届くことが必要です。田畑から市場につながる道路だったり、近隣国につながる幹線道路だったり、海外につながる港や空港だったり……。
 
このような物流インフラをネットワークとして整備して、モノを届けることができる社会の仕組みをつくっていきます
 
 

Q:大学時代に勉強したことが、現在の仕事に活かされていますか?

 
大学では土木工学を勉強していました。土質力学、構造力学、水理学、コンクリート工学や上下水道工学などの土木の基礎的力学を勉強したあと、私が特に興味を持ったのは土木計画学という分野でした。「インフラをいつ、どのように整備することが社会にとって望ましいのか?」ということを調査・計画していく学問で、学部4年生の1年間と大学院の2年間を過ごしました。
 
大学では社会を見る視点、公共財やみんなの暮らしをデザインするという責任と覚悟を学びました。まさに今、その視点が日々の仕事で必要となっていると感じます。さまざまな人や企業が生きる地域・国において、何が必要なのかを、社会全体の視点で主体的に考えるという思考は学生時代に培ったものだと感じます。
 
また、大学院では留学生がたくさんいる研究室だったので(7~8割は外国人)、異なるバックグランドの意見を持った異なる仲間たちとどのように協働していくかは日々の課題であり挑戦でした。
 
どのような環境にあっても、相手を尊重し、ディスカッションしながら到達点を見つけていくというのは、今の仕事においてとても大事な姿勢でありコミュニケーションのあり方だと感じています。
 
 

Q:海外で働く上で大事なこと、必要なことは何だと思いますか?

 
世界を舞台に働くときには、私は「5つのC=コンシダレーション、コミュニケーション、コーポレーション、チャレンジ、コントロール」が特に重要だと思います。
 
必ずしも同じ価値観、同じバックグラウンドの人と一緒に働くとは限らないので、まずは相手を慮り、尊重し、理解しようと務めること。コンシダレーション(Consideration)は欠かせません。
 
また思いや考えを適切に伝えることや聞くことには、英語だけでなく、論理的思考、数字、そして表情や服装やジェスチャーも含めた総合的なコミュニケーション(Communication)が鍵になると考えています。
 
大きな課題に対して一人でできることは限られています。仲間をつくって一緒に協働・協力(コーポレーション:Cooperationすることが、とても重要になります。
 
世界には私たちが今まで出会ったことのない課題や問題がたくさんあります。今までやったことのないこと、誰も経験したことのないことなど、どんな場面に出くわしても、「よし、やってみよう、挑戦してみよう!」というチャレンジ(Challenge)の気持ちを大切にしています。
 
最後のコントロール(Control)は、誰か他の人や物事をコントロールする、という意味ではありません。自分自身の感情をコントロールして、いつもご機嫌でいられるように心がけるというものです。私自身は感情の起伏が激しいほうなのですが、感情が乱れたままでは良好なコミュニケーションができませんし、よい成果も出せないと思っています。自分の感情に向き合い、うまくコントロールすることで、どんなときでも高い成果を出せる自分でいられるように気をつけています。
 
 

Q:今後の夢、やってみたいことをお聞かせください。

 
カンボジア駐在は長くて3~4年です。その間にこの国の魅力をもっと知りたい、感じたいと思い、『カンボジアでしたいこと100のリスト』を作成し始めました。ローカルマーケットでランチする、トンレサップ湖でクルーズ、クメール舞踊を舞う、クメール語でスピーチをするなどをリストに入れています。
 
この100のリストを通して、この国の文化や生活を体験して、この国の魅力を感じていきたいです。
 

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(文=川原田剛 写真=本人提供)