こんにちは(^-^)
東京大学大学院の岡村奈津子です。
理系に進みたいとなれば欠かせないのが数学ですが、「数学」というと、難しい計算や記号がたくさん・・・。
そんな数学を研究している数学者に対しては、数学だけに没頭していて、オシャレとか恋愛とか他のことにはあまり気を使わなそう・・・などとイメージしてしまう人もいるかもしれません。

しかし、研究に没頭しつつも、美しくて他の才能も豊かな人もたくさんいます。
今回は数学者として超一流でありながら、多くの男性が夢中になり、文学でも業績を残したロシアの女性天才数学者コワレフスカヤを紹介します。

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http://en.wikipedia.org/wiki/File:Sofja_Wassiljewna_Kowalewskaja_1.jpg

フランス最大の科学賞受賞、ロシア人女性初の大学教授

 
コワレフスカヤが数学に没頭するようになったのは、14歳の頃と言われています。彼女に数学を教えた家庭教師が、その数学の才能について父親に報告すると、父親は大喜びし彼女を褒めました。父親にたくさん褒められて応援されたことに感激し、コワレフスカヤは数学に没頭するようになりました。そして18 歳を過ぎた頃、ドイツのハイデルベルグ大学へ留学し、数学の研究に専念しました。

コワレフスカヤの数学における最大の功績の一つが24歳のときに発表した「コーシー=コワレフスカヤの定理」です。この定理は、大学の数学や物理などで勉強する「偏微分方程式」のどんな教科書にも基本定理として載っているくらい、重要な定理です。
(私は大学で物理を専攻していたので、物理数学という科目で勉強しました!)

このような素晴らしい功績があるにもかかわらず、コワレフスカヤはなかなか大学の教授になることができませんでした。

当時は女性が大学教授になった前例がほとんどなく、女性が研究職につくことはほとんど認められていませんでした。しかし周囲からの強い推薦もあって、やっとスウェーデンのストックホルム大学の教授になることができました。ロシア人女性として初の大学教授となる快挙でした。
 
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http://www.photolibrary.jp/
 
その後も「固定点をめぐる剛体の回転」という論文が評価されて、38歳のときにフランスにおける最大の科学賞、ボルダン賞を受賞するなど、素晴らしい業績を残しました。

持って生まれた才能もさることながら、閉鎖的なロシアから出て女性1人でも数学を学び続ける行動力と、女性だからと逆風が強い中でも諦めずに研究を続ける意志を持ち合わせていたからこそ、大きな功績を残せたのではないでしょうか。

モテすぎてノーベル数学賞がなくなった!?

コワレフスカヤは18歳で結婚していますが、彼女が33歳の頃に夫が自殺してしまいました。そのショックで5日間意識不明に陥ったものの、少しずつ立ち直り社交界にも顔を出すようになります。

彼女の知性、女性らしい愛くるしい表情とすぐりのような緑色の目という外見的美しさに加え、話がとても上手だったため、コワレフスカヤに会う人々が次々と虜になってしまったそうです。

たとえば、ノーベル賞を創設した、あのノーベルさえもコワレフスカヤのことを好きになったと言われています。そしてコワレフスカヤをめぐる恋愛のいざこざが、ノーベルがノーベル数学賞を作らなかった原因ではないかとも推測されているんです!
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http://en.wikipedia.org/wiki/File:AlfredNobel2.jpg
 
ノーベル賞に数学部門がないことは、レフラーというノーベルのライバルとノーベルの仲が悪かったことが原因であり、二人が仲が悪かった原因はコワレフスカヤをめぐる争いだったのでは?という説があります。

もしノーベル数学賞があったらレフラーが受賞する可能性があったため、レフラーが受賞したら嫌だという理由でノーベルは数学賞を作らなかったと言われています。

36歳の頃、コワレフスカヤは人生最後の恋人となるマクシムと出会います。しかし付き合い始めてしばらくすると、マクシムに「自分と科学のどちらを選ぶのか」と迫られ、恋愛関係に疲れ始めていきます。二人で旅行をしたりしても恋人関係はうまくいかず、コワレフスカヤは次第に追いつめられていきました。

41歳になったばかりのとき風邪をこじらせ化膿性肋膜炎を起こし、最後は1人で息を引き取りました。

 ※ ※ ※

数学者として一流であり、美しくて多くの男性を魅了したコワレフスカヤ。実は、文学でも成果を残し、執筆した本がヨーロッパ中の言語に訳されています。

研究に没頭しつつも、他の才能も豊かで華やかな美人数学者であるコワレフスカヤに憧れてしまいますね。

まずは、やりたいと思ったことは周囲の反対や環境を押し切ってでもやり通して少しずつ結果を残していくことが、コワレフスカヤに近づく第一歩かもしれません。
 
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http://www.photolibrary.jp/
この記事は藤原正彦著「天才の栄光を挫折数学者列伝」を参考にしました。
もっとコワレフスカヤのことを知りたい方や、ニュートンや関孝和といった天才数学者のことも知りたい方は、ぜひ読んでみて下さい。
天才の栄光と挫折―数学者列伝


岡村奈津子 (先輩リケジョ)
東京大学 大学院 博士課程3年生
太陽系がどうやってできてきたかを探るために、ハワイにある
すばる望遠鏡や日本の衛星を使って小惑星を観測しています。
最近は少年漫画とランニングにはまっていて、マラソン大会に
出たいなーと思ったりしてます^^  質問やコメントは 、
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ぜひぜひお願いしますm(__)m