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「やったぁぁあー!」
 
ハイタッチをするのは、クリップモーターカーレースで見事、優勝を飾ったリケジョのお二人。
今月9日、国内最大級の科学の祭典「サイエンスアゴラ2014」で開催された「科学の甲子園 クリップモーターカーレース サイエンスアゴラ特別バージョン」での一幕です。
 
「クリップモーターカー」のクリップとは、紙を留める、あのクリップのこと。それで本当に車が走るの!? と私のように驚く人も、学校の授業で見たこと、作ったことがあるという方も多いかもしれません。
 
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全国の高校生が学校対抗で科学の力を競う「科学の甲子園」。筆記競技、実技競技のうち、クリップモーターカーは過去2回、実技課題として出題されています。全国大会では、当日その場で制限時間内に作成しなければなりませんでしたが、今回は、特別イベントということで、事前に参加校にはキットが配布されました。その内容はこちら。
 
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クリップ、エナメル線、磁石、乾電池、車体を作るためのパーツ…。どれも身近にあるものばかり
 
な~んだ、それなら簡単そうじゃん!と思ったら大間違い!実は、このクリップモーターカー、「右ねじの法則」や「フレミングの左手の法則」といった電磁気学やモーターの知識と工夫が試されるのです。
 
さて。まずは走るかどうか、が問題です。実際にレースでは走り出しに苦戦するチームが続出しました。
 
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(慎重にスタート準備をする選手たち)

 
2人1組のチームで、男子高校生の参加が多いなか、リケジョのチームの出場は全4組。
なんと、優勝・準優勝に輝いたのは水戸第二高校からW出場したリケジョチームでした!!
 
ここでレースを振り返ってみましょう。まずは第一部。各リケジョチームが快調なレース展開を繰り広げた結果、なんと準決勝は「水戸第二高校Aチーム」対「神奈川総合産業高校」のリケジョ対決に!スタート、ゴールそれぞれの地点に両チームの選手がスタンバイします。
 
「レディー・・ゴ-!!」
 
目指すは3メートルのゴール。「いけー!がんばれ~!」と大きな声援が、観客席から送られます。
ところが!ここで神奈川総合産業高校のリケジョチームに思わぬアクシデントが発生!なんとレースの途中で1度だけ電池交換ができることを知らずに準決勝に出場し、スピードが落ちてしまったのです。
 
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神奈川総合産業高校の小池なるみさんは「負けてしまったのは残念ですが、走るようになったのは半日前だったので、まさかここまで進めるとは思いませんでした!」と、悔しさと驚きの両方が交錯しているようでした。
 
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(神奈川総合産業高校 政木香穂さん、小池なるみさん)

 
同チーム政木香穂さんも「今回のレースで課題がクリアになりました!タイヤの位置や、鉄芯を入れるなどの改良をして、またチャレンジしたいです!」と、すでに気持ちは次の機会へと向かっていました。
 
そして、抜群の安定感とスムーズな走りで、続く決勝を勝ち抜き、見事に第一部を制覇したのは、水戸第二高校Aチームの新宅美月さん、篠原由佳里さんのお二人です!
 
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(あと少しでゴール!会場中の声援と視線が集まります)

 
続く第二部でも、水戸第二高校のBチーム(川澄京花さん、髙橋志帆さん)は、“事実上の決勝戦”と呼ばれた準決勝に進出。惜しくも、決勝進出は逃してしまいましたが、相手チームは全国大会でも入賞が狙える5秒台でのゴール!強敵でした!
 
リケジョが大健闘した今回のクリップモーターカーレース。どのチームも放課後の時間を利用したり、試験勉強の合間をぬいながら、準備を進めていました。そのなかでも優勝、準優勝を総なめにした水戸第二高校の勝因は「リケジョ力」にもあったようです。
 
ひとつは、積極的に情報交換を行ったコミュニケーション力
 
「モーターが回るようになったのが大会4日前。先にうまくいっていたAチームからの情報と顧問の鈴木先生のアドバイスのおかげです」と話すのはBチームの髙橋さん。
 
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(第二部でBチームを応援する水戸第二高校のメンバー)

 
技術的な要素として挙げられるのは、鉄芯を使い、コイルを電磁石にしたこと
大会の主審であるJST理数学習推進部 上遠野幸男先生からレース後に解説がありました。
 
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配布されたキットに含まれるクリップの数は6個。最低必要数は2個。「クリップの数が余っている」という顧問の鈴木先生の一言がきっかけで、材料をフル活用すべく、電磁石の二極モーターへと変更。その他にも、コイルの巻き方、タイヤの位置など微調整を重ねた試行錯誤の積み重ねが最大の勝因といえそうです。
 
最初は失敗続きでしたが、動くようになったら嬉しくて!もっと早く走らせたくなりました」と話すのはAチームの新宅さん。同じくAチームの篠原さんも簡単な実験でも、自分でやってみると教科書にある原理と実際のちがいが分かりました」と振り返ります。Bチームの川澄さんも「そのギャップを実感しながら、試行錯誤を恐れずにやることが大切」と実感をこめて話してくださいました。
 
そして「粘り強さや、器用さは男子に負けません!理科は楽しいので、Rikejoをもっと増やしたいです!」と、最後にとても頼もしいメッセージをもらいました!
 
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(水戸第二高校の皆さんと鈴木秀先生。優勝チームの手には科学の甲子園キャラクターの「アッピン」)

 
 

 icon-info-circle お知らせ

さて、ここでお知らせです。あなたも「科学の甲子園」関連イベントに出場するチャンスです!
今度は、高校生のみなさんの「アイデア」を大募集!
 

2015年2月8日(日)に開催される第4回科学の甲子園 全国大会 開催直前!特別イベントでは、
小中学生が思わず理科を勉強したくなるアイデアをワークショップ形式で競います!
詳しくはこちら icon-arrow-right  http://rikai.jst.go.jp/koushien/

 
 
そして2015年3月20日(金)~23日(月)に開催される第4回科学の甲子園 全国大会に向けて、今回のイベントに出場したチームも予選突破を目指して、意気込んでいました!ますます、高校生リケジョの活躍から目が離せませんね!
 
 

【関連リンク】
科学の甲子園  icon-caret-right http://rikai.jst.go.jp/koushien/
サイエンスアゴラ  icon-caret-right http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/

 
 
ライター プロフィール

profile

堀川 晃菜(Horikawa Akina)
知りたい・伝えたい、が原動力の「つたえるリケジョ」
かつての専攻はバイオテクノロジー、研究パートナーは大腸菌。
農薬&種苗メーカー、科学館勤務を経て、ライター・編集者に。