リケジョらしい企画「博士を語ろう」が3/20に、エンパブリック根津スタジオにて開催されました!

 
博士リケジョを対象とした企画って? 人が集まるのかなという事務局の心配は杞憂でした! 13名のリケジョの集まる(博士リケジョは5名)会となりました。
博士というと、失礼ながら「研究しかできない世間知らず」といったイメージを持っている方が多いかもしれませんが、今回参加したリケジョの皆さんは、そんなことは全然なくて、オールマイティな素敵な博士リケジョばかりでした。
 
以下、長文になりますが、ご報告します。
 
まずは、事務局より、博士を巡る環境について、既存資料よりご説明しました。これによると、世間一般的には「博士」に対する評価が高くない、特に企業における人材としては現状では評価は高くないものの、期待は高いということが分かりました。年齢的なこともあり、企業における人材として、専門分野+リーダー力、マネジメント力などが求められていることがわかりました。(資料は、ダウンロードファイルにて見ることができます)

 
次に、今回参加された5名の博士から、自己紹介がありました。
 
Yさんは、化学系の学位を取得して、この4月より専門の出版関係のお仕事に就きます。この職業を選んだ経緯としては、ドクター生の研究室にあるポジションが影響しているようです。ドクター生は、研究室における中間管理職のようなもので、トップである教授と属するメンバーの学生さんをつないでいかなければならないということで、その際に、それぞれの関係が情報伝達の過ちや誤解から悪くなるのを防ぐということに尽力してみて、人と人をつなぐ、情報を伝えるということに興味を持たれたようです。
採用にあたっては、ドクターの採用枠がなくて苦労をされたそうですが、そこは持ち前のチャレンジ精神で、募集がなくても面接までお願いするといったファイトで、内定をゲットされたそうです。お給料は4大卒の人と同じということで、その辺りはまだまだ世間のドクターに対する評価の低さがうかがえますが、Yさんはあまり気にされていません。また、全く新しい分野でのお仕事についても、研究室で、20代で自分で一人で研究をゼロから組み立ててやって博士号をとったという自信に加え、研究室内で、研究費の獲得やその事務、教授から頼まれ業務、学生さんの相談など、ドクターとしてありとあらゆる業務をこなしてきたという自負から来るようです。この点については、他の博士リケジョの方も同様なことをおっしゃっており、博士を取るという苦労したのだから、他は何でもできるという確固たる自信はみなさんあるようです。こうした経験は、たとえ、仕事に自分の専門が活かせなくても、社会人として十分役立つものだとおっしゃっています。
 
Tさんは、地学で博士課程を取得された後、全く畑の違うIT系の企業に就職されてSEをしつつ、採用担当として日夜、理系人材獲得に奔走されています。地学という専門分野の特性から、専門を活かすには研究職しかないが、それにはタイミングやポストがあるまで待てるということが必要であるとのこと。Tさんの場合には、大学に残ることを断念し、就職という道を選んだそうです。就職に当たっても、「博士」だからという理由で面接すら受けられない経験をしたり、また、特に女性の場合、細部まで専門分野のマッチングがないと研究職としての採用も厳しいと感じたそうです。そんな中で、博士であってもいい、専門分野が違ってもいいという柔軟な対応で、採用されたのが今のIT企業だったそうです。「博士だから」というだけで拒否されてきた中で、今の企業での採用はありがたかったそうです。また、人間関係においても、同様に「博士」というだけで自分とは違う人ということで、避けられたりという経験もされているそうです。しかし、そこは、一人で戦ってきた博士リケジョ。そのような状況もめげずに受け止め、博士だからといって避けずに「人間部分」を見てくれる人と付き合えばいいと割り切って、そのようなお付き合いをされてきたそうです。ご主人もそのお一人だそうで、返って、その「ふるい」がいい人間関係構築に繋がっているそうです。また、お仕事の中で、「採用担当」をしていると、たいていの応募者の専門分野がある程度は理解できるそうで、その点については、厳しい目で採用面接をするときに役立っており、それが博士を修了したメリットでもあるとのことです。とにかく、自分の中に、博士課程を過ごす中で自分の力ですべてをやったというものが根底にあって、それが今でもチャレンジ精神、パイオニアといったところに繋がっているとのことです。
 
Sさんは、某国立機関で研究員として活躍されています。専門分野を活かしたキャリア構築をされた、まさに王道の博士リケジョと言えます。博士を取ること自体については、自分がチャレンジした研究が誰もやっていないものだったということで、大変苦労されており、学位取得に6年かかったそうです。しかし、それが評価されて、今の研究機関での就職へと繋がっています。まずは、ポストドクとして採用され、その後、正式採用となったようです。博士を取得してその後の研究生活を行うことについて、Sさんは、男女関係なく同じ土壌で戦える場であること、また、自分が誰もやっていないことをチャレンジできる場であることを強調されていました。
 
Fさんは、生物系で医学博士を取得したのちに、投資ベンチャーつまり金融で働いている博士リケジョです。博士と金融?と思われる方もいるかもしれませんが、サイエンスのバックグランをベースに、マテリアル分野での投資等を検討するお仕事をされているようです。
もともとFさんは、海外に住んでみたいと思っており、そのためには仕事をしなくてはだめで、海外で仕事をするには博士課程が必要という思いから、博士課程に進学されて学位取得をされたそうです。医学博士の場合は、取得に4年かかり、トータルすると10年近くを学生として過ごすことになります。ところが、学位を取得したのちに、ふと考え、一通りやり終えたという満足感もあり、別のこともやってみてもいいのでは?という気持ちになられたそうです。その時に、たまたま大学のプログラムで博士課程のインターンシップ制度があり、それに応募してインターンをしてみて、ここで働いてもいいかもという気になって、そのまま正式採用となったそうです。分野は違えど、学位を取得したことで、何か自分の背中にピーンと背筋が伸びるようような一つのきちんとしたものが入っていて、それが、今の自分を支えており、かつお仕事に活かされているとお考えです。それは、他の方も同じように感じてらっしゃって、一つのことをやりを得た自信となっているのでしょう。
 
Yさんは、現在、某国立大学の助教をされています。もともと工学部出身だったのですが、たまたま4年生の時に、工学部と医学部の融合ということが始まり、丁稚奉公に出された縁で、医学博士を取得されています。小さいころから、家庭で「博士になったら?」と言われて続けていたこともあり、自然と現在に至るという極めて自然体の先生です。ドクターの進学も、もうちょっとやれば面白い結果が出そうだなくらいの感じだったそうです。また、Yさんは、ポストドクとしてスウェーデンの大学に行かれていますが、この時も、医学博士は、一度は海外に出るものという慣習もあったため、受け入れ先を探していたところ、たまたま大学の先生のご友人だった大学の先生に受け入れて頂けたそうです。ただし、大事なことは、チャンスを逃さないということだそうです。うちの大学に来たら?と言われた時に、「ちょっと考えます」ではなくて、「はい行きます」と即答することが大事だそうです。特に海外ではその傾向が強く、ぼやぼやしていたら、他の人にチャンスが行ってしまいます。その辺りの割り切りの良さも、博士リケジョならではなのかなとも思います。スウェーデン帰国後は、新設された母校の大学の学部での助教に採用されて、現在に至ります。色んな意味で、タイミングと決断が大事だということがわかります。現在は、大学の先生なので、研究活動以外にも、入試対応や新入生のケアなど、お忙しい毎日です。また、スウェーデン在住中に生まれたお子さんを育てるリケジョママでもあります。

以上のように多様なキャリアの博士を迎えてのカフェは、参加した他のリケジョの方に大変刺激となったようです。
ディスカッションをしながら、様々な質問などが飛び交っていました。
 
お題の一つ目は、博士の強み、弱みについてです。みなさんが自己紹介をして下さる中でかなりキーワードが出てきましたが、博士リケジョ以外の方の意見も聞きながら、ディスカッションしていきました。
 
強味(メリット)としては以下の意見が出てきました。
・専門性に加えて計画して実行する力、文章を書く力、事実を考察する力など、様々な能力がある
・ストレスに強くなる(研究室での様々な業務や人間関係、または、研究がうまく行かないことへのプレッシャーなどに耐えてきたという経験から)
・若い(世間づれしていないので若々しい)
・どんなことにも柔軟に対応できる。どんな無茶オーダーにも対応できる気がする。
・「学位を取った」というのが、自慢ではなく、自身の中で「誇り」となる(20代を研究に捧げたこととの交換ともいえるが、、)
・一人であること、一人でやることに耐えられる(会社の中では、博士リケジョは一人という状況でも、私とは違うと思われてもへこたれない、気にしない)
・チャレンジ精神が旺盛
・好奇心が旺盛で、意外と引出しの多い人が多い。突き詰めたい人が多いので、趣味を突き詰めるすごい人も、結構いる。料理がプロ級にうまいとか、、、。
・ものおじしない(上下関係なく、自分の考えをきちんと言う)
 
弱み(デメリット)としては以下の意見がでました。
・社会の偏見にさらされる(特異な人と思われる、コミュニケーション能力がない・専門外のことの仕事をさせるとすぐやめると思われる)
・歳を取る(青春を研究に捧げる、採用試験の年齢制限を軽く超える)
・理屈っぽくなる(女子としてどうか?!)
・すべてにおいて、結論を求める
・学生時代が長いので、お金がかかる(奨学金やドクターならではのアルバイトでなんとかなるとの意見も)
 
また、博士の問題は、男女違うことはありませんが、女性ならでは強味もあるとの意見もでました。
・実験や研究において、体力勝負では男子に負けるので(研究を徹夜で連続して続けるとか)、新たな視点や発想で勝負をしようすることが、かえって、いい結果と繫がる。
・柔軟さ(専門バカにならずに、色々な問題に対応できるとか、コミュニケーション能力があるとか、キャリアチェンジできるとかは女性ならではかも)
・マイノリティーなゆえに、すぐに名前を憶えてもらえて、それが得になる。
・割り切り方 吹っ切れ具合がすごい! 人生、守りに入らない(ドクターに進む女子という選択をした時点で、人生を攻めている感じ、、そもそも人生守りに入っている女子はドクターに進まない)
・合コンでドン引きされる(博士女子というだけで引かれる)のはデメリットであるが、それを何とも思わない。人間性を見てくれる人と付き合うことができる!
 

二つ目のお題は、「博士リケジョのキャリア形成に必要なこと」です。
周りの環境もそうですし、博士リケジョ自身としても必要なことなどを話し合い、以下のような意見が出ました。
 
・相手に自分のやっていること(研究していること)を理解してもられるようにしゃべれるようになる。往々に一般の人に分かりやすく伝えることが 自分の研究の価値を理解してもらうためにも、人材としてのポテンシャルの高さを知ってもらうためにも必要。これは、採用ということだけでなく、研究活動して、研究費の獲得といったケースにおいても必要とされることです(Rikejoでは、ダビンチセッションプログラムを通じて、こうした問題の解決を、試験的に試みています こちら)。
・とにかく「覚悟」が必要。20代を研究に捧げるという覚悟、博士に進むという覚悟、もしかしたら専門を活かせないキャリア形成があるかもということあると自覚する覚悟などなど。
・積極性が必要。また、レアな存在なので、ロールモデルはないと思った方がいい。周りがこうしているのではなくて、自分がキャリアを切り拓く、新しいキャリアを作っていくらいの気持ちが大事。
・研究を仕事と思う視点も大事。税金を使って研究をしているとか、世の中へのフィードバックを意識した取り組みが必要。
・女子だからは通用しないことを理解する。ただし、女性としての特徴は受け入れて、上手く使っていけばいい。(女性が一人いると場が和むと言われて、それに対し、女性って差別しないでと目くじらを立てるのではなくて、ほめ言葉と受け取り、最大限それを利用して、商談をまとめるなど成果へと持っていけばいい。)
・自分を信じる(ドクターだからということで世間的には不条理な場面もあるかもしれないが、とにかく、ここまで頑張ってきた自分を信じることが大事)
・研究室だけでなく、色々な外部の人としゃべること、他の世界を知ることが大事。研究室基準だけで物事を見ない。(理系でコミュニケーション力があるかもと思っていても、社会一般レベルではそうでないことも)
 
最後に、今回のディスカッションを通じて、新たに発見したことについて発表してもらいました。
 
特に、学部生の人にとっては、イメージしていた人物象とは異なったようで、研究だけに固執している人たちかと思っていたら、次のステップにチャレンジできるフットワークの軽い方々であった点、軸はありつつも柔軟に生きてらっしゃる方々であった点などが、驚きとともに挙げられました。
また、博士リケジョご本人からは、改めて自分が色々な人に支えられていることを認識したということ、博士リケジョって意外といるんだなといこと、みんな考え方や生き方、ぶち当たった壁が同じであったことが共有できてよかったというご意見をいただきました。
 
みなさん、博士リケジョであることに対して自然体であることが、私には目からウロコでした。意識として、たまたま実験が好きで博士になっただけで、歌が好きでAKBを目指したりするのと基本は同じと思っているそうで、そこもまた、博士リケジョの方々の魅力かもしれません。
 
一番若い、今度大学生になるお一人の方の発言が、私的にはとってもツボでした。まさに、この会の趣旨も表しているのではないでしょうか?
それは、
 
「博士リケジョって、人生に対して肉食ですね」
 
そうなんです。博士リケジョの方の魅力はなんて言っても、前向きさとたくましさだと思います。自分で切り開く力、解決する力、トライ&エラーに臆さない気持ち、、、。これって、社会人にとっても、求められる能力だと思うのですが。ですから、博士リケジョに皆さんは、どこでもやっていける! 活躍できると思うのです。
 
世間の色々な誤解があるように思います。世の中の、博士に対する認識を変革していく。それもRikejoプロジェクトの使命なのではないかと思ってしまったのでした。
そして、米国では、普通の企業に努めている人や、タクシー運転手までにも博士がいる社会。日本でも博士に進むことが当たり前の世の中になればいいなというのが、皆さんの共通の思いです。
また、今回お集まりいただいた5名の方のキャリアは多様です。博士課程へ進学してもこのように、柔軟な考えでキャリアを構築していることを、世の中の企業や大学の方に知ってもらいたいと同時に、後輩リケジョのみんなにも知ってもらい、博士リケジョが増えることを期待します。
 
お集まりいただいた皆様、ありがとうございました!
(矢部)
次は、「成立学園×Rikejo お仕事してもらいました!」